当番制で自宅待機をさせた場合にも、賃金を支払わなければならないでしょうか?
当院では、医療に従事する者について、緊急時の体制を備えるために、当番制で自宅待機を命じていますが、実際に呼び出して業務に就いた場合を除いて、特に賃金の支払いを行っていません。
これは、違法でしょうか。
関連する法律等について教えてください。
上記「当番制で自宅待機をさせた場合にも、賃金を支払わなければならないでしょうか?」に対する回答
法律上は自宅待機について賃金を支払わなければならないとの定めはありませんが、何らかの手当を支給することが望ましいでしょう。
ご質問のケースでは、まず、「自宅待機」が労働時間に当たるかどうかが問題となります。
そこで、「自宅待機」と比較的似た「休憩時間」と「手待ち時間」と比較しながら、この問題を検討してみましょう。
労働時間は、原則として、「使用者の指揮命令下(黙示の命令を含む)にあって労務を提供している状態」とされていますが、この点に注目してみますと、休憩時間は使用者の指揮命令下になく、労務の提供もありません。
しかも、休憩時間は自由利用が保障されています。
したがって、休憩時間は労働時間には含まれません。
次に、「手待ち時間」についてみますと、手待ち時間も労務の提供をしていませんが、あくまで次の仕事を待機している状態にありますので、広い意味で使用者の指揮命令下におかれ、待機時間を完全に自由利用することはできません。
したがって、手待ち時間は、労働時間に含まれるものと解されています。
ところで、「自宅待機」の時間は、労務を提供していない点では、休憩時間や手待ち時間と共通した点がありますが、完全に自由利用が保障されている点で休憩時間に近く、「待機」している点で手待ち時間と似ています。
しかし、「自宅待機」の場合は、場所的には自宅に拘束されるものの、その時間は自由に利用できますので、事業場(勤務場所)で使用者の指揮監督のもとに拘束される一般的な「手待ち時間」とは異なるものと考えられます。
以上を総合的に判断すると、ご質問のケースでは、自宅待機の時間を「労働時間」とみなす必要はありません。
したがって、自宅待機の時間について賃金を支払う義務はありませんが、当番制で行わせるということですので、自宅に拘束することを労う意味で、何らかの手当を支給するのが望ましいでしょう。
カテゴリー:労働時間
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