残業時間が8時間に達したときに代休に振替える場合、その都度本人の意思確認が必要ですか
労働協約で残業時間が8時間に達したときは代休を与えるという残業振替制度を設けている場合に、実際に代休に振替えるときに本人の意思確認をする必要がありますか。
なお、残業に対しては、2割5分の割増賃金は支払っています。
上記「残業時間が8時間に達したときに代休に振替える場合、その都度本人の意思確認が必要ですか」に対する回答
通常の賃金に相当する部分を代休に振替える(この場合、代休日を有給としなければならない)こととする措置は、あくまで、便法であって、仮に労働協約で定められていても、実際に振替える場合には、代休を同一賃金計算期間内に取得することを本人に確認すべきものと思われます。
なぜなら、代休を与えても、実際に代休が当該同一賃金計算期間内に取得されない場合には、労働基準法の定める「賃金全額払いの原則」に違反しますので、代休の確実な取得を確認しておく必要があるからです。
労働基準法(以下「法」という)第37条第1項は、法定労働時間を超えて労働させた時間に対しては、2割5分増以上の率で計算した割増賃金を支払うことを義務づけていますが、この場合の「割増賃金」には、時間外労働(以下「残業」という)に対する通常の賃金も含まれるものと解されます。
したがって、残業に対しては、所定内賃金に割増賃金を加えた額、つまり、所定内賃金の1.25以上を支払わなければなりません。
ところで、ご質問の意味は、残業に対して割増部分(0.25の部分)のみを支払って、その時間に対する所定内賃金(1.0の部分)は支払わず、時間外労働が8時間に達したときに代休に振替える(代休を有給として、代休取得日に通常の賃金を支払う)ことが認められるかどうかという意味かと思われます。
このような取扱い自体は、代休が当該賃金計算期間に取得され、残業時間に相当する代休に対して通常の賃金(1.0の部分)が支払われる限り必ずしも違法ではないものと解されます。
しかし、一般に代休の取得は、本人の選択に委ねられていることが多いため、代休を付与したのちすぐに取得されない可能性がありますが、もし、代休が、時間外労働の時間が8時間に達したときの属する賃金計算期間中に取得されなかったときは、残業時間に対する通常の賃金が支払われないことになり、法第24条第1項が定める「賃金全額払いの原則」に違反することになります。
したがって、代休に振替えること(残業時間が8時間に達したこと)を本人に告げ、確実に代休を取得することを確認しておく必要があります(この場合、代休取得日を同期間内に指定することでも差し支えないでしょう)。
要するに、残業時間が8時間に達したときに通常の賃金に相当する部分を代休に振替えるという措置はあくまで便法であって、仮に労働協約で定めたものであっても、「全額払いの原則」に違反しないための最小限の歯止め措置として「本人の意思確認」という手続きを踏むべきものと思われます。
なお、本人の意思確認をした場合にも、実際に代休が当該賃金計算期間中に取得されなかったときは、法第24条違反となることに留意して下さい。
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