1回連続8時間以上の残業を、翌日分の勤務とみなすことができるでしょうか?
当社工場勤務者の1日の所定労働時間は、午前8時から午後5時(休憩1時間)の8時間ですが、業務の関係上、終業時刻を超えて翌朝5時まで(その間に2時間の休憩時間を付与している)連続18時間労働をさせることがあります(翌日は勤務させません)。
このようなとき、終業時刻後(翌朝5時までの10時間)の労働を翌日分の繰上げ勤務とみなし、時間外労働割増賃金の支払義務は生じないと解釈することはできるでしょうか。
当社の就業規則には、始業・終業時刻を繰上げ・繰下げることがある旨を定めています。
上記「1回連続8時間以上の残業を、翌日分の勤務とみなすことができるでしょうか?」に対する回答
終業時刻後引続き行われた労働を翌日分の繰上げ勤務とみなすことはできませんので、原則どおりの時間外労働・深夜業割増賃金の支払い義務が生じます。
ただし、1カ月単位の変形労働時間制を適用した場合には、連続18時間労働を1回の勤務とみなすことができますので、時間外労働割増賃金の支払い義務は生じません。
まず、結論から申し上げますと、ご質問のように連続した勤務である限り、終業時刻以降の労働を翌日分の繰上げ勤務とみなすことはできません。
したがって、午後5時以降の労働に関しては、原則どおりの時間外労働割増賃金とあわせて午後10時から翌朝午前5時までの労働に対する深夜業割増賃金の支払い義務が生じます。
ご質問は、残業代コスト(割増賃金)の負担を軽くしたいとの趣旨のようですが、1カ月単位の変形労働時間制(以下「1カ月変形労働制」という)を活用すれば、「連続18時間労働」を1回の勤務とみなすことが可能となり、その場合には時間外労働割増賃金の支払義務は生じません。
1カ月変形労働制は、1カ月以内の一定期間(変形期間)を平均した1週間あたりの労働時間が40時間以内であるときは、40時間を超える週や8時間を超える日があってもよいという制度です(労働基準法第32条の2)。
この制度を導入するには、当該制度を導入する(ことがある)旨と変形期間の起算日を就業規則に定め、さらに、変形期間内の全労働日および各日・各週の労働時間、ならびに各日の始業および終業の時刻等について、就業規則または労使協定(以下「就業規則等」という)に定めなければなりません。
このように、1カ月変形労働制は、原則的には、各変形期間ごとの全労働日その他所定の事項をあらかじめすべて特定しておくべきものですが、業務の実態から、月ごとに勤務割り等を作成する必要がある場合には、各変形期間の開始(起算日)前に特定する方法が認められています。
貴社では、業務の関係上、連続18時間労働をさせることがあるとのことですが、恐らくそれは毎月決まった日にではなく不定期に必要性が生じるものかと思われます。
このような場合には、前述のように、変形期間の起算日の前日までに所定の事項を定め労働者に通知することができれば、1カ月変形労働制を適用することができます。
すなわち、「連続18時間労働」をさせる日およびその日の属する変形期間内の全労働日および各日・各週の労働時間ならびに各日の始業および終業の時刻を、当該変形期間の起算日の前日までに労働者に通知したときには、1カ月変形労働制を適用することができるわけです。
この場合、当該連続18時間労働は1回の勤務となりますので、この労働に関して時間外労働割増賃金の支払い義務は生じません。
ただし、午後10時から翌日午前5時までの勤務に対する深夜業割増賃金の支払い義務は免れませんのでご注意下さい。
なお、前述のとおり、就業規則に「1カ月単位の変形労働時間制を採用することがある旨とその場合の起算日」について定められていることが前提となります。
また、「連続18時間労働」をさせる日がその日の属する変形期間内に決定したような場合には、1カ月変形労働制は適用できません。
このような場合の終業時刻以降の労働に対しては、原則どおりの時間外労働割増賃金と深夜業割増賃金の支払義務が生じることになります。
カテゴリー:労働時間
,カテゴリー:変形労働時間
アクセスランキングトップ10
次には、アクセスの多いQ&A記事のトップ10を表示しています。
- (現在集計中)