当月分の時間外手当一部を翌月給与支払日に概算で支払い、翌々月の給与で精算してもよいでしょうか?

 弊社では、就業規則の定めに基づいて、所定内賃金については当月分を当月25日に支払い、時間外手当等は、原則として、当月分を翌月25日に支払っています。

 ただし、当月28日?末日の時間外手当については、見込み(概算)額を翌月25日に支払い、その差額分を翌々月の25日に精算しています。

 この処理は違法となるのでしょうか。

上記「当月分の時間外手当一部を翌月給与支払日に概算で支払い、翌々月の給与で精算してもよいでしょうか?」に対する回答

 通常の給与支払日に時間外手当の一部について、見込み(概算)払いをしたのち、翌々月に精算するということだけについていえば、その額が少額である限り、必ずしも法違反とはなりませんが、恒常的に行うことは好ましくありません。

 給与の支払日と締切日を実情にあったものに改定されることをおすすめします。

 労働基準法(以下「法」という)第24条は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」(第1項)、「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」(第2項)と、

1.通貨払いの原則、
2.直接払いの原則、
3.全額払いの原則、
4.毎月1回以上払いの原則、
5.定期期日払いの原則、

 と賃金支払いについて五つの原則を定めています。

 したがって、賃金の支払いに当たっては、これらの原則に違反してはなりません。

 そこで、まず問題となるのは、時間外手当を「翌月25日に支払う」ことが上記の賃金支払五原則に違反するかどうかという点ですが、たとえば、時間外手当の締切日を月末とし、支払日を翌25日にするという措置は、前述の「賃金支払五原則」のうち、関係する全額払いの原則、毎月1回以上払いの原則、定期期日払いの原則に必ずしも違反しません。

 しかし、時間外手当の一部、すなわち、月末の3?4日分を、翌々25日に支払う場合には、「全額払いの原則」に抵触します。

 ただし、ご質問のように、翌月の支払い日に見込み(概算)払いをし、翌々月に精算する場合には、実際の時間外手当にほぼ相当する金額が支払われており、かつ、精算時の調整額が少額で、しかも、概算支払い額を超えることもあるが、不足することもあるといった場合なら、必ずしも「全額払いの原則」に違反しないものと解されます。

 なぜなら、全額払いの例外的措置の一つとして、給与計算の実務の必要性があること、また、労働者にいつも不利益となることがないことを条件に、賃金の精算が認められているからです。

 この点について、行政解釈では、「前月分の過払賃金を翌月分で清算する程度は賃金それ自体の計算に関するものであるから、法第24条の違反とは認められない」(昭23.9.14基発第1357号)としています。

 しかし、貴社のように、賃金締切日が月末で、支払日が翌25日の場合、賃金計算の期間が20日以上もありますので、どうしても翌々月に精算しなければならないという必要性があるとは思えませんし、また、調整額が少額であっても、恒常的に時間外手当の額が確定するのが翌々月25日という処理の仕方は、賃金締切日が事実上確定していないことになりますので、望ましいものとはいえません。

 したがって、賃金の支払日と締切日の関係を見直し、不合理のないようにすべきでしょう。

カテゴリー:諸手当

アクセスランキングトップ10

 次には、アクセスの多いQ&A記事のトップ10を表示しています。

  • (現在集計中)