退職給付会計での退職給付債務等の計算方法を教えてください

 2000年4月以降に始まる事業年度より退職給付会計が実施され、退職給付債務等を計算し決算書に表示しなければならなくなったと聞きましたが、その計算方法等について教えて下さい。

 なお、当社では企業年金は一切やっておらず、従業員数は約200名です。

上記「退職給付会計での退職給付債務等の計算方法を教えてください」に対する回答

 原則法による退職給付債務等の計算は相当複雑な処理になりますが、従業員数300人以下の小規模企業等では、簡便法による計算方法が認められます。

 経済のグローバル化が進行し、あらゆるビジネス・ステージにおいてグローバルスタンダードへの準拠が求められています。

 企業会計の面では、大企業を中心に「連結決算」、「キャッシュフロー会計」など、国際会計基準に準拠した会計処理の義務化が始まりました。

 そんな中、平成12年(西暦2000年)4月1日以降に始まる事業年度より、「退職給付会計」が義務化されることになります。

 退職給付会計とは、退職給付債務を貸借対照表上に正しくオン・バランス化し、内外への開示を義務づけるもので、これにより、これまで簿外債務(隠れ債務)としてクローズされていた退職給付の積立不足情報等がオープンにされます。

 この退職給付会計の処理基準として、平成10年6月に企業会計審議会が「退職給付会計基準」を公表しましたが、その実務上の取扱いについて日本公認会計士協会が取りまとめた「退職給付会計に関する実務指針」(以下、単に「指針」という)が先般(平成11年9月)公表されました。

 各企業での退職給付に関する会計処理は、この指針に基づいて行うこととなります。

 指針に定める退職給付債務等の原則的な計算方法(以下「原則法」という)は、かなり複雑な内容となっており、中小企業等においては相当な事務負担となる(実際、中小企業等が自社内で算出することは困難)ことから、原則として、従業員数300人未満の小規模企業等においては、「原則法」によらず「簡便法」による計算を認めています。

 貴社は、従業員数約200名とのことですので、この簡便法によって計算すればよいことになります。

 ただし、ひと口に簡便法といっても、退職金制度が退職一時金のみのケースや、適格退職年金等を利用するケースなど様々な取り決めがありますが、貴社では企業年金は導入されていないとのことですので、ここでは、簡便法に基づいて、社内積立てによる退職一時金制度の場合の退職給付債務、退職給付引当金および退職給付費用の計算についてのみ見ることにします。

【退職給付債務】(以下の3つの方法からの選択可)

1.退職給付会計基準の適用初年度の期首における退職給付債務の額を原則法に基づいて計算し、当該退職給付債務の額と自己都合要支給額との比(比較指数)を求め、期末時点の自己都合要支給額に比較指数を乗じた金額を退職給付債務とする方法。

2.退職給付に係る期末自己都合要支給額に、平均残存勤務期間に対応する割引率および昇給率の各係数を乗じた額を退職給付債務とする方法。

3.退職給付に係る期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法。

【退職給付引当金】

 原則として、上記によって計算された退職給付債務の額を退職給付引当金とする。

【退職給付費用】

 原則として、期首退職給付引当金残高から退職一時金制度に係る当期退職給付額を控除した後の残高と期末の退職給付引当金との差額を当年度の退職給付費用とする。

 なお、「会計基準変更時差異の取扱い」、「簡便法から原則法への変更」ほか、簡便法に関してその他にもいくつかの取り決めがあります。

 また、退職給付会計の導入とあいまって、いわゆる確定拠出型年金の検討も各社で進められていますので、詳しくは、貴社ご担当の公認会計士にご相談されるとよいでしょう。

 最後に、退職給付会計は、前述のとおり、原則として、2000年4月1日以降に開始される事業年度または連結会計年度から適用となりますが、当該年度からの処理が困難であると認められる企業では、適用を1年延長し、2001年4月1日以降に開始する事業年度または連結会計年度からの適用とすることもできることとされています。

カテゴリー:退職金

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