行方不明になった社員の退職金を、配偶者に支払うことができますか?

 従業員がしばらく前から行方不明になり、配偶者から退職届と退職金の支払いの請求が出されました。

 退職金を配偶者に支払ってもさしつかえないでしょうか?

上記「行方不明になった社員の退職金を、配偶者に支払うことができますか?」に対する回答

 配偶者には、退職金を支払うことはできません。

 退職金は、労働協約や就業規則(付属規程を含む)などによって、支給要件が明確にされている場合には、賃金に該当しますので、労働基準法により、通常の賃金と同様、直接本人に支払わなければなりません。

 ただし、賃金は使者に支払うことは差し支えないとされていますので、使者として認められる場合には、本人以外の者にも支払うことができます。

 しかし、本人が行方不明である場合に、配偶者を本人の使者として認めることはできませんので、配偶者に退職金を支払うことはできないことになります。

 また、退職金は、本人の金融機関の口座へ振り込むことができますが、この場合にも、本人の同意が必要になりますので、この方法によることもできません。

 そこで、本人が行方不明となった場合の退職金については、法務局、地方法務局またはその支局などの供託所に供託する方法をとります。

 つまり、退職金を供託所に保管してもらい、後日、本人が受領できるようになったとき、供託された退職金を供託所から受領するという方法です。

 この措置によってはじめて、会社は、退職金を本人に支払ったものとみなされます。

 この場合、退職金を供託した旨を本人に通知する必要がありますが、これについては、民事訴訟法に定める「公示送達」の方法によります。

 これは、所在不明の者の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てをし、裁判所の掲示板に掲示するほか、官報や新聞に少なくとも1回掲載するなどして行なう意思表示の方法です。

 この場合、最後に官報また新聞に掲載された日から2週間を経過したときに、相手方に意思表示が到達したものとみなされます。

 なお、民法の「不在者の財産管理人」の定めによる場合には、退職金を含めた行方不明者の財産について、一定の手続きによって配偶者が受領することができます。

 家庭裁判所は、財産を残したまま住所または居所を去った者(不在者)に対して、不在者の親族や債権者などの請求によって財産の管理(処分)を行うことができることとされており、配偶者が生活費などを請求する場合には、この方法によります。

カテゴリー:退職金

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