就業規則が総務部にしか置いていない場合にも、周知しているといえるのでしょうか?

 当社の就業規則は、本社の総務部に置いてありますが、一人ひとりに配布していません。

 この度、ある従業員から「総務部にあっても、従業員に配布していなければ、労働基準法上の就業規則の周知義務を果たしたことにならないのでは」という質問がありました。

 就業規則が総務部にしか置いていないという当社の状況は、労働基準法に違反しているのでしょうか?

上記「就業規則が総務部にしか置いていない場合にも、周知しているといえるのでしょうか?」に対する回答

 貴社の事業所が1ヵ所しかない場合には、見やすい場所に備え付けられている限り、場所が総務部でも差し支えありませんが、支店や工場など他の事業所がある場合には、その事業所の従業員は就業規則を容易に見ることができませんので、労働基準法に違反します。

 労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を雇用する事業主は、就業規則を作成しなければならないこととしていますが、就業規則の作成または変更に当たっては、
1.意見聴取、
2.行政官庁への届出、
3.周知
 という3つの手続きをすることを使用者に義務づけています。

 このうち、周知方法については、次の3つの方法のいずれかによることとしています(同施行規則第52条の2参照)。
1.常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること。
2.書面を労働者に交付すること。
3.磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

 したがって、就業規則を周知するためには、必ずしも一人ひとりに配布する必要はなく、上記の3つの方法のうち、いずれかの方法によればよいわけです。

 ところで、貴社では、総務部に置いてあるということですので、一応、1の「備え付け」という方法で就業規則の周知義務を果たしているといえます。

 ただし、総務部がある本社以外に事業場(支店や工場など)がある場合には、不十分です。

 なぜなら、法令は「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付ける」ことを求めており、作業場単位で就業規則を備え付けなければならないこととされているからです。

 なお、「作業場」について、行政解釈では「事業場内において密接な関連の下に作業の行われている個々の現場をいい、主として建物別等によって判定すべきもの」としています。

 したがって、貴社の事業場が本社しかないのであれば、総務部に備え付けている場合でも、「見易い場所」に置かれている限り、周知義務を果たしているといえますが、支店や工場がある場合には、本社総務部に備え付けるだけでなく、支店や工場にも備え付けることが必要です。

カテゴリー:就業規則

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