年俸制を導入するにあたって給与規程を改定する場合の留意点は何ですか?

 当社では、この度賃金制度の改定を実施し、それに伴って課長以上の管理職の給与を月給制から年俸制に変更することにしました。

 そこで、給与規程で年俸制について定める場合に留意すべき点を教えてください。

上記「年俸制を導入するにあたって給与規程を改定する場合の留意点は何ですか?」に対する回答

 年俸制導入にあたっては、給与決定形態として年俸制を採用する旨を定めるとともに、年俸制の対象者の範囲、年俸額の決定要素、改定時期および算定期間ならびに支払方法について給与規程に定めます。

 その際、年俸額を毎月1回以上、一定期日に分割して支払うこと(締切日と支払日を定めること)、また、労働基準法第41条第2号の管理監督者以外の者については、割増賃金の支払いが必要となることに注意してください。

 近年、年俸制を導入する企業が増えてきています。

 98年の労働省の実態調査では、全体の導入率が12.3%、30人?99人の企業でも1割を超えるという結果がでています。

 このように、年俸制を導入する企業が増えているのは、企業が対象者に経営参画意識を醸成・高揚することを強く望んでいるからと考えられます。

 さて、ご質問の年俸制を導入するにあたり、給与規程を改定する場合の留意点ですが、賃金制度の運用は企業経営において核になる部分ですので、運用に支障をきたさないように整合性を保った規定となるようにすることが大切です。

 年俸制について給与規程に定める場合には、少なくとも次の項目を盛り込む必要があります。

1.給与の形態
 月給制を採用している場合、給与規程では「社員の給与の形態は月給制とする」などと規定しますが、年俸制にする場合には、「年俸制とする」と、年俸制を採用する旨の定めを明確にしておきます。

2.対象者の範囲と割増賃金
 年俸制を全社員に適用するのか、それとも管理職に限って適用するのかどうかを定めておく必要があります。
 ご質問では、課長以上に適用するということですので、「年俸制は、課長以上の役職者を対象とする」旨を記載します。
 その際、注意が必要なのは、「課長以上」の人がすべて労働基準法第41条第2号に定める「管理監督者」に該当するかどうかを吟味することです。
 もし該当しない人がいる場合には、年俸額とは別に時間外労働割増賃金を支払うことが必要となるからです。
 また、管理監督者に該当する場合にも、深夜業割増賃金の支払いが必要となりますので、時間外労働や深夜業の割増賃金の取り扱いについて明確に定めておく必要があります。

3.支払方法
 年俸制を採用する場合にも、労働基準法第24条の、「毎月1回以上払いの原則」と「一定期日払いの原則」が適用されます。
 そこで、給与規程では、たとえば「決定した年俸総額を月額給と賞与に配分して支給する」、「月額給は毎月25日に支払う」などのように、上記の原則に沿った定めをする必要があります。
 また、賞与を支給する場合には、たとえば、「年俸額の16分の1を毎月支払い、16分の2を6月と12月に賞与として支払う」などのように定めます。

4.改定の時期
 年俸制を採用する多くの企業では、年1回、1年間の個人業績や組織業績などの評価を翌期の年俸額に反映させています。
 そこで、年俸額をいつ改定するのかについて規定しておく必要があります。
 たとえば、「年俸額の改定は、通年の評価の結果ならびに昇降格等に基づき、原則として年1回、4月1日付けで実施する」などのように、改定額の決定根拠と改定の時期について定めておくことも大切です。
 また、年俸額を変更することがあること、年俸額の改定時期を変更することがあることを規定しておいてもよいでしょう。

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