遺族厚生年金を受給する実母は、所得税や健康保険の被扶養者となることができますか?

 当社の社員であるAのお母さん(70歳)は、Aと同居しています。

 このお母さんは年間160万円の遺族厚生年金を受給しているそうですが、Aさんの被扶養者として、所得税法上の扶養控除対象となることができるでしょうか。

 また、健康保険の被扶養者になることができるかどうかについても教えて下さい。

上記「遺族厚生年金を受給する実母は、所得税や健康保険の被扶養者となることができますか?」に対する回答

 遺族厚生年金はその額にかかわらず非課税とされていますので、所得税法の被扶養者に該当します。

 また、被保険者と同一生計にある65歳以上の方は年間の収入が180万円未満で、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であれば、健康保険の被扶養者になることができます。

 まず、所得税法上の被扶養者となるかどうかという点ですが、所得税法上の扶養親族とは「所得者と生計を一にする親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除く)、児童福祉法による里子又は老人福祉法の規定による養護老人」で、その年の所得金額が38万円以下の人をいうこととされています。

 ご質問の場合、Aさんとお母さんは親子であり、かつ、同居していますから、「生計を同じくする親族」という条件を満たしています。

 したがって、問題となるのは、Aさんのお母さんの所得金額が38万円以下であるかどうかという点です。

 ご質問では、Aさんのお母さんは遺族厚生年金を160万円受給されているとのことで、38万円を超えていますが、厚生年金保険法では、老齢厚生年金、脱退手当金などを除く年金給付は、金額にかかわらず、原則として非課税とすることとしており(同法第41条第2項)、また、所得税法第9条でも、
公的年金制度による遺族厚生年金や遺族基礎年金などを非課税とする旨規定しています(地方税でも同様の取扱いがなされています)。

 したがって、Aさんのお母さんが受給している遺族厚生年金については、年金額に関係なく、全額非課税(つまり、所得金額がゼロ)となりますから、Aさんのお母さんは所得税法および地方税法上の扶養親族に該当することになります。

 次に、健康保険の被扶養者になるかどうかについてですが、まず、健康保険法では、健康保険の被扶養者の範囲について、

1.主として被保険者によって生計を維持している被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係にある者を含む)、子、孫、弟妹、
2、被保険者と同一世帯に属し、かつ主として被保険者によって生計を維持している被保険者の3親等以内の親族のうち、1に該当していない者および被保険者の内縁関係にある配偶者の父母、子、と定めています(健康保険法第1条第2項)。

 以上の基準に照らしてみるとき、まず、Aさんのお母さんはAさんの直系尊属に当たりますから、?の親族要件をクリアしています。

 次に、生計維持関係については、収入のある人が「主として被保険者によって生計を維持している」とみなされるためには、60歳未満の方では年収130万円未満、60歳以上の方および一定の障害の状態にある方であれば年収180万円未満であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であることが必要とされていますが、Aさんのお母さんは60歳以上で、遺族厚生年金の受給額は年額160万円ですから、生計維持要件もクリアしていることになります。

 そこで、Aさんの年収がお母さんの遺族年金の受給額の2倍以上、つまり、320万円以上である場合には、Aさんのお母さんは健康保険上もAさんの被扶養者になることができます。

カテゴリー:社会保険

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