通勤災害の給付の請求を遡ってすることができますか?

 先日、当社の社員Sが、半年前に自転車で通勤途中に転倒して足を怪我した事案を、通勤災害として認めてほしいと言ってきました。

 当人によると、そのときは通勤災害には該当しないと思い、健康保険を使ったとのことです。

 このような場合、通勤災害の請求を遡ってすることができますか。また、その際に必要な証明書など提出書類を教えてください。

上記「通勤災害の給付の請求を遡ってすることができますか?」に対する回答

 時効(2年又は5年)になっていなければ通勤災害の請求をすることができます。

 労災保険法では、業務災害の補償給付を受ける権利に関する時効を、事由発生の日から起算して、

(1)療養補償給付、休業補償給付及び葬祭料については2年、

(2)障害補償給付及び遺族補償給付については5年と定めています。

 すなわち、それぞれ2年または5年の間は給付を受ける権利があるということです。

 ご質問の場合は通勤災害ですが、通勤災害の給付の時効についても、行政通達で「通勤災害に関する場合も、業務災害に関する場合と同様に適用」するとしています。

 したがって、ご質問の場合は時効になっていませんので、今からでも請求することができます。

 ご質問の場合、災害当時、通勤災害に該当しないと思い、業務外の傷病として、健康保険の被保険者証を使って療養を受けたということですので、通勤災害として労災保険の給付を受けるためには、下記のような手続きが必要となります。

(1) 社会保険事務所(または健康保険組合)に対して通勤災害であるにもかかわらず、誤って健康保険の療養の給付を受けた旨を申し出る。

(2) 社会保険事務所(または健康保険組合)の指示に従って、社会保険事務所に保険給付金を返納する。
 その際、診療報酬明細書(レセプト)の写しをもらう。

(3) 労働基準監督署へ次の書類を提出して労災保険(通勤災害)の請求をする。

(a)「療養の給付たる療養の費用請求書(16号の5(1))」。

 この請求書には、医師と事業主の証明を受ける必要がありますが、健康保険で清算済との理由で、医師の証明が貰えない場合がありますが、その場合には、その理由を書いて本人の記名捺印をした「理由書」を提出することになります。

(b)社会保険事務所(または健康保険組合)へ返納した返納金の領収書原本。

(c)診療報酬明細書(レセプト)の写し。

 なお、労務不能で4日以上仕事を休んだ場合には、以上に加えて、「休業給付支給請求書(16号の6)」(医師と事業主の証明を受ける)を提出する必要があります。

 また、労務不能で4日以上休んだことによって、健康保険の傷病手当金を請求してしまった場合には、療養の費用の場合と同様、社会保険事務所(または健康保険組合)にその旨連絡のうえ処理することが必要となります。

カテゴリー:社会保険

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