会社が負担していた本人負担分の社会保険料を個人負担に切り替えることはできますか。
当社では、これまで、社会保険料の本人負担分をふくめた、社会保険料の全額を会社負担としてきました。
しかし、最近会社の業績が思わしくないため、社会保険の本人負担分を個人負担に切り替えようと考えています。
このような措置は認められるでしょうか。
上記「会社が負担していた本人負担分の社会保険料を個人負担に切り替えることはできますか。」に対する回答
事業主が負担する社会保険料の被保険者負担分は労働基準法上の賃金に当たるものとされていますので、一方的に被保険者(労働者)負担に切り替えると、労働条件(賃金)の不利益変更に当たらないかという問題が生じます。
この原則に戻す措置をとることによって、実質的な賃金切り下げにはなりますが、法令上は社会保険料の負担は労使折半とされていますので、違法とはならないものと解されます。
厚生年金保険と健康保険の保険料は、厚生年金保険法第82条及び健康保険法第72条によって、事業主と被保険者が折半で負担するものとされております(ただし、健康保険組合の場合は組合規約で負担割合を任意に定めることができる)。
しかし、企業によっては、貴社のように、被保険者負担分の保険料の一部を事業主が負担しているケースがあります。
このように、被保険者負担分の保険料を事業主が負担する場合には、「労働者が法令により負担すべき所得税等(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料等を含む。)を事業主が労働者に代って負担する場合は、これらの労働者が法律上当然生ずる義務を免れるのであるから、この事業主が労働者に代って負担する部分は賃金とみなされる。」(昭63.3.14基発150号)と労働基準法上の賃金と扱うこととされています。
そこで、労働基準法上の賃金となる被保険者負担分の保険料の事業主負担を一方的に廃止することは、実質的に賃金の引き下げになり、労働条件(賃金)の不利益変更という問題が生じます。
就業規則等の変更によって、画一的集合的に労働条件を不利益に変更するためには、判例法理上、高度の必要性と合理性が必要とされていますが、被保険者負担分の保険料を事業主が負担することは、もともと労使折半という厚生年金保険法や健康保険法の定めに反するものですから、その変更には「合理性」があるものと考えられます。
したがって、このような変更をすること自体は、ただちに違法とはならないものと解されます。
ただし、変更によって確実に労働者の手取り賃金が目減りすることを考慮するならば、その一部分を補填するなど、なんらかの代替措置を講じるようにしたほうがよいものと思われます。
カテゴリー:社会保険
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