就業規則に定めを設ければ退職した社員を会社に呼び出すことはできるのでしょうか?
当社の就業規則では、退職時の業務の引継ぎを完了させるため「退職後も必要に応じて退職者を呼び出すことがある」旨定めていますが、法律上問題はありますか?
また、当社の呼び出しに応じない場合には、退職金を減額するなどの対抗措置を講じることができるのでしょうか?
上記「就業規則に定めを設ければ退職した社員を会社に呼び出すことはできるのでしょうか?」に対する回答
就業規則に退職後の呼び出し規定を定めること自体は問題ないものと考えられますが、その規定を根拠に退職者を呼び出すことはできませんし、退職金を減額するといった対抗措置をとることもできません。
多くの企業の就業規則では、退職時の手続きについて「退職時までに引き継ぎの業務を完了しなければならない」旨規定されていますが、貴社のように「業務上必要がある場合には退職者を呼び出すことがある」と、業務の引継ぎの進捗状況によっては退職後も出社を命じる定めを設けている企業はあまり見られません。
なぜなら退職者にはこのような規定をしてもその効力が及ばないからです。
ところで、ご質問では、「業務上必要がある場合には退職者を呼び出すことがある」旨を規定することが法律上問題あるかどうかということですが、就業規則に定めること自体には問題ありません。
しかし、前述のように退職者には就業規則の効力が及ばないため、就業規則に定めた退職後の呼び出し義務に応じない場合に退職金を減額したり、制裁を加えることはできません。
この点について裁判例でも、「その行為(業務の引継ぎを不完全なまま退職したこと)は、責められるべきものであるけれども、未だもって労働者である被控訴人らの永年勤続の功労を抹消してしまうほどの不信行為に該当するものと解することができない」(昭和59.11.29大阪高裁判決『退職金等請求控訴事件』)と、業務の引継ぎが不完全なまま退職することは、退職金を支給しないと取扱うほどの不信行為には当たらないものとして退職金を支払うべきものとしています。
以上のことから、就業規則に「業務上必要がある場合には退職者を呼び出すことがある」旨の規定を設けること自体に問題はありませんが、この規定には法的な効力がありませんので、引継ぎが不十分なときは、自由意思による協力を求めるほかないでしょう。
カテゴリー:採用・雇用
アクセスランキングトップ10
次には、アクセスの多いQ&A記事のトップ10を表示しています。
- (現在集計中)