私傷病で療養のため休業中、年次有給休暇を取得することを制限できますか?

 当社では、病欠連続3日間は年次有給休暇の取得を認めていますが、4日目以降は健康保険の傷病手当金を申請することとし、年次有給休暇の取得を認めていません。

 この扱いは法的に問題があるのでしょうか。

上記「私傷病で療養のため休業中、年次有給休暇を取得することを制限できますか?」に対する回答

 年次有給休暇は、労働者が請求した時季に与えなければなりませんので、本人が請求があったにもかかわらず、年次有給休暇の取得を認めないことは違法となります。

 しかし、年次有給休暇は、事前に請求(時季を指定)すべきものですので、事前に請求がなされないまま休業している場合には、傷病手当金の申請をすることとしても差し支えありません。

 健康保険法第45条に定める「傷病手当金」とは、健康保険の被保険者が疾病または負傷により療養のため労務不能となった場合に、労務不能日が連続3日経過後に、労務不能の日1日につき標準報酬日額の100分の60を支給するというものです。

 したがって、いわゆる病欠等で休業したときは、休業4日目から標準報酬日額の60%が支給されます。

 ただし、傷病手当金は、療養中の所得保障を目的としたものですから、療養のために休業した日の給与が支払われる場合には、給与の額が傷病手当金の額より低い場合にその差額のみが支給され、給与の額が傷病手当金以上である場合には傷病手当金は支給されません。

 一方、年次有給休暇を取得したときは、「平均賃金または通常の賃金あるいは健康保険の標準報酬日額のいずれか」(労働基準法第39条第6項)の賃金が支払われることになります。

 したがって、傷病手当金と比べると年次有給休暇を取得した方が高い額となります。

 このため、未取得の年次有給休暇がある場合には、傷病手当金の支給を受けるよりは年次有給休暇の取得を希望するのが当然であると思われます。

 また、「病欠が4日以上続いた場合に」傷病手当金を請求し、年次有給休暇の取得を会社側が制限することは違法となります。

 なぜなら、年次有給休暇は、「労働者は、労働基準法の規定する要件を満たす場合には、時季を指定していつでも取得することができ、会社側は、労働者の時季指定に対しこれを承認したり、承認しなかったりする余地はない」(昭48.3.2最高裁第二小法廷判決 林野庁白石営林署・国鉄郡山工場事件参照)ものとされているからです。

 しかし、年次有給休暇は、事前(前日の終業時刻までと解されている)に請求(取得の時季を指定)するものとされていますので、本人の請求がないまま休業している場合には、健康保険の傷病手当金を申請することとしても差し支えありません。

カテゴリー:休日・休暇

アクセスランキングトップ10

 次には、アクセスの多いQ&A記事のトップ10を表示しています。

  • (現在集計中)