社員によって異なる年次有給休暇の基準日を統一する際の留意点をご教示ください

 当社では、中途採用者が多く、年次有給休暇の基準日がまちまちです。

 事務処理があまりにも煩雑なので基準日を統一したいのですが、その場合、どのような点に注意が必要でしょうか?

上記「社員によって異なる年次有給休暇の基準日を統一する際の留意点をご教示ください」に対する回答

 年次有給休暇の基準日を統一する際には、すべての従業員の年次有給休暇が法定付与日数を下回ることのないようにしなければなりません。

 年次有給休暇は、
(1)雇い入れ後6か月間継続勤務し、
(2)全労働日の8割以上出勤した従業員に対して10日、その後は継続勤務年数が1年増えるごとに1日ずつ加算した日数(20日を限度とする)
 を付与しなければならないものとされています。

 したがって、年次有給休暇を付与すべき日(基準日)は、原則として各人の入社日を起算日として、6か月後、1年6か月後…というように、その従業員の入社日に応答します。

 ところで、この法定基準どおりの年次有給休暇を付与しますと、中途採用者が多い場合には、従業員によって基準日がバラバラとなって、管理が煩雑になります。

 そこで、このような煩雑さを回避するため、行政解釈では、一定の要件を満たす場合には、基準日を統一して全従業員の年次有給休暇を斉一的に取り扱うことができるものとしています。

 一定の要件とは、次のとおりです。

(1)年次有給休暇の付与日以前に統一基準日を設けること。
 労働基準法に定める年次有給休暇の付与日は、前述のように、雇い入れの日から6か月継続勤務した日、その後は1年を経過するごととなっていますが、統一基準日を設ける場合には、すべての従業員の直近の基準日より前に統一基準日を設定しなければなりません。
 その際、法定の基準日より前倒しして付与することは差し支えありません。
 逆に、本来の基準日より1日でも遅れて付与することは、労働基準法に違反しますので注意してください。

(2)短縮された期間はすべて出勤したものとみなして出勤率を算定すること。
 年次有給休暇は、前年度の出勤率が8割未満の場合には、当年分については与えなくてもよいことになっていますが、基準日を統一することによって継続勤務の期間が短縮された従業員の出勤率を計算する際には、短縮された期間は全期間出勤したものとして取り扱う必要があります。

 次有給休暇の基準日を統一する際の留意点代表的な方法としては、
(1)基準日を年1回とする方法、
(2)基準日を年2回とする方法、
(3)基準日を年2回とし、分割付与する方法の3つがあります。

(1)基準日を年1回とする方法
 これは、本来は入社日から6か月経過した日に付与すべき10日の年次有給休暇を前倒しして入社日に付与し、以後1年以内に到来する初回の基準日(この例では翌年の4月1日)に、11日を付与することで、基準日を統一する方法です。
 この場合、入社日から初回の基準日までの継続勤務期間が6か月未満の従業員には、入社月に応じて9日?1日の法定水準を上回る休暇を与えて、初回の基準日に初年度分の10日を付与するようにすれば、入社日による不均衡を緩和することができます。

(2)基準日を年2回とする方法
 この方法は、4月1日と10月1日のように、統一基準日を年2回とする方法です。
 この方法は、まず4月1日から9月30日までの間に入社した従業員の基準日を、10月1日とし、10月1日から3月31日までの間に入社した従業員の基準日を4月1日とします。
 この方法なら、いつ入社しても、初回の基準日までの期間がすべて6か月以内におさまりますので、初回の基準日に年次有給休暇を10日付与すればよいことになります。

(3)基準日を年2回とし、分割付与する方法
 この方法の場合にも、4月1日から9月30日までの間に入社した従業員の基準日を10月1日、10月1日から3月31日までの間に入社した従業員の基準日を4月1日とします。
 そして、初年度の年次有給休暇の10日分のうちから、入社日から最初の基準日までの月数に応じた日数を入社日に前倒しして付与します。
 そして、残りの日数を、入社後最初の基準日に付与します。
 この方法によれば、入社月にかかわらず、初回の付与日数と入社後最初の基準日における付与日数の合計が、初年度の法定付与日数である10日となり、かつ、入社月による不公平が少なくなります。

 なお、初年度の年次有給休暇を分割付与した場合には、翌年度分の日数を最初に付与した日から1年以内に付与しなければなりません。

 したがって上記の例の場合には、翌年度以降の基準日は、4月1日から9月30日までの間に入社した従業員の基準日は4月1日、10月1日から3月31日までの間に入社した従業員の基準日は10月1日となります。

カテゴリー:休日・休暇

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