拒否権付き希望退職制度の実施は可能ですか?

 当社では現在、退職金を上乗せする優遇措置を講じた希望退職制度の導入を検討していますが、優秀な社員からの申し出を拒否できるよう「申し出の諾否については個別に判断する」という事実上の拒否権付き制度として実施したいと思っています。

 このような措置は法的に問題ないでしょうか。

上記「拒否権付き希望退職制度の実施は可能ですか?」に対する回答

 申し出を認めないことがあること、申し出を却下した者に対して会社はなんら不利益な取扱いをしないこと、その他所定の事項をあらかじめ明示して行なえば、拒否権付きの制度として実施しても問題ないものと考えられます。

 希望退職制度は、なんらかの優遇措置(貴社が検討されている「退職金の上乗せ措置」がもっとも一般的)を講じて、年齢などあらかじめ会社が定めた一定の要件(たとえば「満50歳以上」)に該当する社員に対して、定年年齢に達する前に退職することを奨励する制度です。

 この制度は、多くの場合、いわゆる“リストラ”を目的として行われ、特に、賃金に見合った働きができていないと判断した中高年齢者の削減を狙いとすることが多いようです。

 しかし、一方で、辞めてほしくない優秀な社員から優遇措置を利用した退職の申し出がなされる可能性もあります。

 そのため一部の企業では当該制度を実施する前に、対象範囲にある者のうち辞めてほしくない社員に対しては「君はわが社になくてはならない人材だから申し出ないでほしい」などと、いわゆる“逆肩たたき”をするケースも見られます。

 ところで、ご質問のポイントは、「優秀な人材を辞めさせないために、『申し出の諾否については個別に判断する』という拒否権付きの制度として実施しても法的に問題ないか」ということですが、基本的に、問題はないものと思われます。

 ただし、制度導入の際、あらかじめ次の事項を明示しておく必要があるでしょう。

 すなわち、
1.優遇制度の申し出は認めない場合もあること、
2.承諾か却下かの判断は会社が各種事項を総合勘案して決定すること、
3.優遇制度申し出の却下は通常に退職することを拒否するものではない(却下された者についても通常に退職することはできる)こと、
4.申し出を却下された者は退職の意思表示を撤回することができること、そして、
5.申し出を却下した者に対して会社は何らの不利益な取扱いをしないこと、などです。

 以上の事項をあらかじめ明示しておけば、申し出を承諾された者はもちろん、申し出を却下された者についても基本的に不利益はなく、運用上の混乱もないものと考えられます。

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