年休申請と辞表を同時に提出した社員に対して、退職日の変更を命ずることができますか?

 ある社員(課長)が、10日間の年次有給休暇取得届と辞表を同時に提出したまま、出社しなくなりました。
 辞表に記された退職日は、土・日の休日をはさんで14日後となっています。

 年次有給休暇の取得はやむを得ないと思うのですが、これでは業務引継ぎのための出社日が1日もありません。
 このような場合、退職日の変更を求めて、業務引継ぎをさせることができないものでしょうか。

 なお、就業規則には、「退職願を提出したのち、2週間を経過したとき」退職とする旨定めています。

上記「年休申請と辞表を同時に提出した社員に対して、退職日の変更を命ずることができますか?」に対する回答

 ご質問の場合には、法的には、その社員の退職(すなわち、労働契約の解約)は有効なものとなります。

 しかし、業務引継ぎがなされないため、会社が具体的な損害(支障)を被る場合には、話し合いで退職日を繰下げるか、退職の後、何らかの方法で引継ぎを要求することはできるでしょう。

 民法第627条第1項は、「当事者ガ雇用ノ期間ヲ定メザリシトキハ、各当事者ハ何時ニテモ解約ノ申入ヲ成スコト」ができることとし、当該雇用契約は、「雇用ノ解約申入ノ後2週間ヲ経過シタルニ因リテ終了ス」ることとしています。

 貴社の就業規則の定めは、この民法の規定に準拠したものと思われますが、この規定は労働契約の解約手続きについて定めたものですので、労働契約の解約に際して「業務引継ぎ」を条件とする特約をすることはできます。

 例えば、「退職願を提出したのち、2週間を経過したときは退職とする。ただし、業務引継ぎを終了しないときはこの限りではない。」などと就業規則に定めがあれば、ご質問のようなケースは防ぐことはできるわけで、その点で、貴社の就業規則は不備といわざるを得ません。

 しかし、ご質問のように、就業規則で退職願提出後2週間を経過したときには無条件に労働契約の解約が成立すると定めている以上、退職日までの間、年次有給休暇を取得して「業務引継ぎ」ができなくなったとしても、その社員に対して違法性を追求することはできないことになります。

 そこで、業務引継ぎがないと業務遂行上支障が生じるようなときは、本人の了承を得て退職日を繰り下げるか、退職後、何らかの方法で引継ぎをしてもらうようにするしかありません。

 ご質問では、当該者は課長職にあったということですので、それ相応の社内的な責任を負っておられたと思われます。

 そこで、最小限の業務引継ぎのための時間はとるべき責任があることを理由に、本人の協力を得るようにするほかないでしょう。

カテゴリー:解雇・退職

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