賃金制度の変更に伴って給与が下がる従業員がいる場合は、不利益変更になりますか?

 当社は、この度、賃金体系の抜本的見直しを行いましたが、その変更に伴って、給与が上がる人と下がる人が出てきました。

 このような制度変更は不利益変更になるのでしょうか。

 また、同時に年俸制を導入した場合に給与が下がる場合はどうでしょうか。

上記「賃金制度の変更に伴って給与が下がる従業員がいる場合は、不利益変更になりますか?」に対する回答

 一般論としては、賃金制度の変更により給与が下がる場合にも、不利益変更にあたりますので、原則として当事者の同意を得る必要があります。

 しかし、賃金・人事制度の変更に伴って、格付けの変更などによって特定の者の賃金が下がることがあっても、全体として制度変更が承認され、格付けに合理性があると認められる場合には、必ずしも個々に同意を得る必要はないものと解されます。

 賃金は労働条件のうち最も基本的なものですので、一般論としては賃金低下は労働条件の不利益変更にあたり、個々の従業員の同意を必要とするものと解されています(労働組合との団体交渉で同意が得られれば、この限りではありませんが)。

 ご質問では、「賃金制度の変更」といわれていますが、それが、基本給(基本的賃金)の決定基準の変更なのか、諸手当の支給基準の変更(改廃を含む)なのか、定かではありませんが、一般に諸手当の支給基準の変更によって、諸手当が上がる(新規に支給される)人と下がる(それまで支給されていた手当が廃止される)人が出る場合には、統一的な労働契約の変更となり、その変更内容が合理的なものである限り、一部の人に不利益に変更されたとしても個々の同意は必要ないものと解されます。

 しかし、賃金制度の変更(基本給体系の変更)によって基本給が下がる人が出る場合には、賃金制度(基本給の決定基準)の変更について、労働組合または従業員の同意が必要と考えられます。

 ただし、新しい制度への移行に際して、格付けの変更または新しく格付けが行われる場合には、格付けの変更によって給与が低下する人が生じても、その格付けが合理的な基準に基づいて行なわれるのであれば、当事者個々に同意を得る必要はないものと解されます。

 ただし、個別面談などを行って、新しい格付けの理由、根拠などをよく説明し、一人ひとりの納得を得るよう努めることが望ましいことはいうまでもありません。

 年俸制を導入する場合にも基本的には同様です。年俸制の場合も、従業員が納得し、同意が得られれば年俸額の引き下げも可能となります。

カテゴリー:賃金・賞与

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