遅刻3回を欠勤1日として給与から控除してもよいでしょうか?

 当社の就業規則では、
「一給与計算期間中に遅刻または早退を3回した場合には、1日欠勤したものとみなして、1日分の賃金を控除する」
 旨を定めていますが、問題があるでしょうか。

上記「遅刻3回を欠勤1日として給与から控除してもよいでしょうか?」に対する回答

 遅刻3回を欠勤1日とする規定は違法性があります。

 賃金はもともと、労働の対価(代償)として支払われるものですから、遅刻、早退等によって労務の提供がなかった時間分の賃金を支給しないこととしても、“ノーワーク・ノーペイ”の原則に基づくもので、何ら問題ありません。
 しかし、“減給の制裁”は、「労務提供がなされ、本来支給すべき賃金の一部を控除すること」ですので、次のような法律上の制限が設けられています。

(1)1事案(1件)に対する減給額は、平均賃金の1日分の半額を超えないこと。
(2)複数事案に対して減給する場合にも、一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えないこと。

 これらのことを踏まえ、貴社の就業規則の定めに問題があるかどうかについて見てみましょう。

 例えば、1日の所定労働時間が8時間である場合に、1カ月(一給与計算期間)に3回の遅刻をした従業員の遅刻時間の合計が4時間を超える場合には、まず4時間分の不就労時間に相当する賃金を控除することは何ら問題ありません。

 次に、「遅刻・早退3回を欠勤1日とみなす」ということは、1カ月の遅刻・早退が3回になったときに、“1事案”の制裁事由が発生することになりますが、1事案について減給の制裁として控除できる額の上限は、平均賃金の1日分の半額、すなわち、4時間分の賃金に相当します。

 したがって、不就労時間の合計が4時間以上になる場合には、1日分(8時間分)の賃金をカットすることは差し支えありませんが、3回の遅刻・早退の合計不就労時間が4時間未満の場合に1日分の賃金控除を行うと、減給の制裁として4時間を超える時間分の賃金、すなわち、平均賃金の1日分の半額を超える額に相当する賃金が控除されることになりますので、労働基準法に定める減給の制裁の制限に抵触することになります。

 したがって、ご質問のような定めは、違法となる可能性がありますので、遅刻や早退に対してペナルティを課すには、
(1)遅刻または早退が3回以上になった場合には精皆勤手当を支給しない、
(2)遅刻または早退(合理的理由のないもの)が3回以上に及んだときは不就労時間の賃金を控除するほか、平均賃金の1日分の半額を控除するなどと定めることなどが考えられます。

カテゴリー:賃金・賞与

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