会社が倒産した場合、分割払いにした未払いの退職金や未払い賃金はどうなるのでしょうか?

 当社は、最近、資金繰りが悪化しているため、退職金を30ヵ月分割という約束で、何人かの従業員に辞めてもらいました。

 しかし、その後もいよいよ業績が悪化し、給与も一部遅・欠配せざるを得なくなっています。

 このままいけば、やがて倒産することは明らかですが、もし、会社が倒産してしまった場合、従業員に分割払いを約束した退職金の未払い分や未払い賃金はどうなるのでしょうか。

上記「会社が倒産した場合、分割払いにした未払いの退職金や未払い賃金はどうなるのでしょうか?」に対する回答

 既往の労働に対して支払われる債権である賃金や退職金の未払い分については、「賃金の支払いの確保等に関する法律」に基づいて、未払い賃金の立替え払いが行われます。

 賃金の支払いの確保等に関する法律(以下「賃確法」という)は、
1.社内預金の保全措置
2.退職手当の保全措置
3.退職労働者の賃金に係わる遅延利息
4.未払賃金の立替払事業
 の4つについて定めており、社内預金や退職金については、使用者はその第5条で、一定額について保全措置を講じるように努めなければならないと定めています。

 保全措置の内容は、
1.労働者に対する退職手当の支払いに係わる債務を銀行その他の金融機関に、要保全額について保障することを約する契約を締結すること。
2.要保全額について、労働者を受益者とする信託契約を信託会社と締結すること。
3.労働者の退職手当の支払いに係わる債権を被担保債権とする質権または抵当権を、要保全額について設定すること。
4.退職手当保全委員会を設置することとしています。

 しかし、これらの保全措置がとられていない場合、また保全措置を講じていても、これによって賄い切れないときは、労働福祉事業団が雇用保険の財源から一定の範囲で未払い賃金の立替払い事業を行うこととしており、立替え払いが行われています。

 立替払い事業における立替払いの限度額は、年齢区分に応じて未払い賃金総額の100分の80に相当する額とされており、具体的には、
1.基準退職日において、30歳未満である者は賃金総額70万円の100分の80(56万円)、
2.30歳以上45歳未満の者は賃金総額130万円の100分の80(104万円)、
3.45歳以上である者は賃金総額170万円(136万円)となっています。

 ただし、対象となるのは、資本金の額および常時使用する労働者の数等によっても制限されておりますのでご注意ください。

 このほか、民法は、退職金および労働者が受けるべき最後の6ヵ月の賃金債権に限り、「先取特権を有する債権」とし、他の債権者に対して優先して支払いを受ける権利を保障し、また、商法でも、民法と同様に雇用関係に基づいて発生する労働者の債権すべてについて、会社の総財産の上に、先取特権を認めています。

 しかし、これらの定めは、倒産した会社に財産がある場合のことで、実際には倒産と同時に財産はなくなっている(債務超過)ものと思われますので、特殊な場合を除いて、これらの法律が適用されることはないものと思われます。

 なお、いずれの場合も就業規則や労働協約等によって予め支給条件が明確である場合の退職金については賃金と認められますが、口頭での約束や恩恵的に支給されている退職金に対しては賃金とは認められませんのでご注意ください。

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