1日の労働時間を短縮する代わりに、年間の休日数を減らすことはできるでしょうか

 年間の総所定労働時間数を変えないで、1日の労働時間数を短縮する代わりに年間の休日数を減らす(所定労働日数を増やす)ことはできるでしょうか。

上記「1日の労働時間を短縮する代わりに、年間の休日数を減らすことはできるでしょうか」に対する回答

 変形労働時間制を採用して、週40時間を超えないようにすれば不可能ではありませんが、休日数を減らすことは労働条件の不利益変更に当たります。

 ご質問だけでは、現行の休日制度の内容(レベル)はわかりませんが、例えば、1日の所定労働時間が8時間で完全週休2日制、祝日も休日となっている場合に、祝日を労働日にして休日数を減らしても、週の所定労働時間は40時間以内に収まっていますので、法定労働時間との関係では問題となりません。

 しかし、完全週休2日制から月3回週休2日制にするなどのように、週休を減らす場合には、週休2日制でない週が生じ、所定労働時間が40時間を超える週ができてしまいます。

 そこで、1カ月単位または1年単位の変形労働時間制を採用して、一定期間を平均した所定労働時間が40時間以内になるようにする必要があります。

 ご質問では、「年間の総所定労働時間を変えないで」とありますので、「1年単位の変形労働時間制」を採用して、変形期間を平均した週の所定労働時間が40時間以内となるように休日を設ければよいと思われます。

 以上のように、変形労働時間制を採用すれば、1日の所定労働時間を短縮して休日を減らすことも法律上は不可能ではありません。

 しかし、休日数を減じることは就業規則(労働条件)の不利益変更に該当するという問題があります。

 最高裁の判例では、就業規則の不利益変更に当たっては、合理的な理由が必要であるとしています。

 そして、合理性があるかどうかの判断基準として、
1.就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、
2.使用者側の変更の必要性の内容・程度、
3.変更後の就業規則の内容自体の相当性、
4.代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、
5.同種事項に関する我が国社会における一般的状況
 などを挙げ、これらを総合的に考慮して判断する必要があるとしています(「第四銀行事件」9.2.28最高裁第二小法廷判決)。

 ご質問のケースの場合で見ますと、従業員が被る不利益の程度について、1日の勤務時間が短縮されることによって従業員が受ける利益と、休日数の減少によって従業員が被る不利益の程度を総合的に判断する必要があるわけです。

 休日数の減少が年間で数日程度であれば、不利益の程度は比較的小さいものと思われますが、すべての祝日を労働日にしたり、完全週休2日制でなくすなどのように、年間の休日数が10日以上にものぼるような場合には、従業員の十分な納得を得るようにすることが大切です。

 この点については、ご質問とは逆のケースですが、「年間の休日数を増やす代わりに、1日の所定労働時間を延長したケース」で、「週休2日制の導入に伴う平日の勤務時間延長には合理性なし」とした判決も出されています(「函館信金事件」札幌高裁9.9.4や、「北都銀行(旧羽後銀行)事件」仙台高裁秋田支部判決9.5.28)ので、慎重に行うようにして下さい。

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