海外出向者の社会保険は、出向先と出向元のどちらで適用されるのでしょうか?

 この度、当社は海外に関連子会社を設立し、数名の社員を出向させることになりました。

 そこで、出向者の社会保険については、これまでのものが継続されるのか、それとも新たに現地の社会保険が適用されるのか、どちらでしょうか。

上記「海外出向者の社会保険は、出向先と出向元のどちらで適用されるのでしょうか?」に対する回答

 出向者の人事労務管理と賃金の支払いを出向元である貴社が行なう場合には、健康保険と厚生年金保険及び雇用保険の被保険者資格は継続されますが、労災保険については、海外派遣者特別加入制度に加入する必要があります。

 まず、健康保険と厚生年金保険については、出向元である貴社が今後も海外出向者の人事労務関係を掌握し、賃金を支払い続ける場合には、これまでの被保険者資格が継続されます。

 ただし、その場合も出向期間が2?3年までに限られており、出向期間があまり長い場合には、社会保険の資格の継続は認められません。

 それに対して、海外出向者の人事労務関係が出向先で行われ、賃金(の大半)が、出向先企業から支給される場合には、貴社との雇用関係はないものとみなされ、貴社で取得した被保険者資格を継続することはできません。
 (つまり、資格を喪失することになります)

 したがって、この場合には、我が国の健康保険に代わるものとして、公的な医療保険制度が実施されている国では、現地の会社でその公的保険に加入し、ない国では、日本の海外傷害保険に加入するようにします。

 なお、厚生年金保険については、被保険者資格は継続されませんので、年金の空白期間をつくらないためには、国民年金の任意加入制度(国民年金法附則第5条参照)を利用することになります。

 賃金の支払方、出向期間などを見て、出向元、出向先のどちらで適用されるか判断のつかない場合には、社会保険事務所が実態を見て判断することになっていますので、相談してみて下さい。

 次に、労働保険については、労災保険と雇用保険では、扱いが異なります。

 まず、雇用保険については、出向元企業で賃金の一部でも支払っている場合には、被保険者資格は継続されます。

 ところが、労災保険については、我が国の労災保険は属地主義をとっているため、海外への出向者には適用されませんので、現地の労災保険に加入することになります。

 国によっては労災補償制度がなかったり、あっても十分な給付が受けられない場合もあります。

 そこで、海外への派遣者のために設けられた「海外派遣者特別加入制度」に加入して、海外での労災事故に備える必要があります。

カテゴリー:社会保険

アクセスランキングトップ10

 次には、アクセスの多いQ&A記事のトップ10を表示しています。

  • (現在集計中)