従業員会と賃金交渉を終業時刻後に行った場合、時間外労働となるのでしょうか?

 ベース・アップや賞与などの賃金交渉を従業員会と行う場合に、終業時刻をオーバーすることがあります。

 従業員会は、この時間について時間外労働と扱うよう要求してきていますが、労働時間に含めなければならないのでしょうか?

上記「従業員会と賃金交渉を終業時刻後に行った場合、時間外労働となるのでしょうか?」に対する回答

 終業時刻を超えて行った従業員会との賃金交渉に要する時間を時間外労働として取扱う必要はありません。

 ご質問では、従業員会との間でベース・アップ(以下「ベ・ア」という)や賞与などの賃金交渉をしておられるとのことですが、まず、従業員会が労働組合法(以下「労組法」という)上の労働組合であるかどうかが問題となります。

 なぜなら、労組法上の労働組合であれば、団体交渉が時間外に行われた場合に賃金を支払うことは、労働組合への支配介入(経費援助)とみなされ、不当労働行為となるからです。

 そこで、まず、従業員会が労組法上の労働組合か否かについて検討してみる必要があります。

 労組法第2条では、労働組合について「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体またはその連合団体をいう」と定義しています。

 そして、使用者の利益代表の参加を許すもの、使用者の経費援助を受けるもの、福利事業のみを目的とするもの、および主として政治運動又は社会運動を目的とするものは、労組法上の労働組合には該当しないものとしています。

 従業員会がもともと上記の定義のような労組法上の労働組合でない場合には(ベ・アや賞与などの賃金交渉をしていることから見ますと、従業員会と称していても労働組合である可能性は高いと思われますが)、労組法の規制は受けませんので、時間外に及ぶ賃金交渉に対して賃金を支払うなどの経費援助をしても、必ずしも不当労働行為にはなりません。

 しかし、従業員会が労組法上の労働組合である場合には、上記のように、使用者が労働組合に経費援助等をすると不当労働行為となることがあります。

 ただし、「労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉すること」は、不当労働行為から除外されています(労組法第7条ただし書)ので、労組法上の労働組合であっても、所定労働時間内に労働組合と賃金交渉を行った時間については賃金を支払っても差し支えありません。

 しかし、所定労働時間外に団体交渉等を行い、その時間に対して賃金を支給することについては労組法第7条第3号の「経理上の援助」すなわち不当労働行為に該当するものと解されていますので、避けるべきでしょう。

カテゴリー:労使関係

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