新しい基準日が到来した直後に退職する場合にも、新年度分の年次有給休暇を与える必要がありますか?

 当社では、毎年10月 1日を統一基準日として年次有給休暇を付与していますが、10月31日付けで退職することが決まっている社員がいます。

 この場合、この者にも10月 1日には新年度分の年次有給休暇を付与する必要があるのでしょうか。

 また、この者が新たな日数も含めて、年次有給休暇を請求してきた場合、すべての日数を与えなければなりませんか。
 時季変更権を行使することはできないのでしょうか。

上記「新しい基準日が到来した直後に退職する場合にも、新年度分の年次有給休暇を与える必要がありますか?」に対する回答

 年次有給休暇は基準日(入社応答日)に付与する義務がありますので、基準日が到来したときは新たな年次有給休暇を与えなければなりません。

 また、請求された年次有給休暇は、時季変更権を行使しない限り、労働者が請求した時季に与えなければなりません。

 年次有給休暇は、労働者に休息を与えることにより、心身の疲労回復をさせ、業務に精励させるためのものですから、退職予定者には未取得の年次有給休暇を与える必要がないとか、今後企業への貢献が期待されない退職予定者に対して、年休を付与するのはおかしい、などと思われる方もおられるかも知れません。

 しかし、年次有給休暇は、労働基準法第39条第1項では、「6ヵ月間(その後1年間)継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合」には、所定の日数を与えなければならないものとされています。

 したがって、基準日が到来すれば、年次有給休暇の権利は自動的に発生し、労働者が前年度の残日数と合わせて請求してきた場合には、使用者はこれを拒むことはできません。

 ただし、前年度の残日数と新年度分を合わせた日数を退職日前に請求しなかったときは、残余の日数は「退職」によって消滅します。

 なぜなら、年次有給休暇は労働日に労働義務を免除するものであり、退職後に与えることはできないからです。

 なお、退職まぎわに年次有給休暇を請求することによって、事業の正常な運営に支障が生じる場合(たとえば、引き継ぎができないなど)に、「時季変更権」を行使することができるかどうかが問題となりますが、時季変更権を行使するためには、他の時季に年次有給休暇を取得できることが前提となりますので、退職日以前の日に、年次有給休暇が取得できる範囲でこれを行使しなければなりません。

カテゴリー:休日・休暇

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