年金記録問題について整理する
年金記録問題の経緯
「宙に浮いた年金記録」「消えた年金記録」が大問題となっていますが、この 年金記録問題について、整理してみましょう。
まず、平成9年1月に基礎年金番号が導入されました。
国民年金・厚生年金・ 共済年金と、加入する制度が変わっても同じ基礎年金番号で年金を管理する仕組みになりました。
それまでは、転職毎に新しい年金手帳を作成し、複数の年金番号を持っているというケースがありました。
複数の番号があっても、年金の請求手続き時に統合できれば問題ないわけですが、統合できなければ、もらえるはずの年金がもらえないということになります。
実は、このような問題はこれまでにもありました。
本人が加入していた年金に気がつかなかったというケースもありますが、「確かに保険料を払っていたのだけれど」と社会保険事務所に申し出ても、記録が確認できなければ年金としてもらえませんでした。
「証拠を出せ」と言われても、何十年前の領収書や給与明細など持っていない人が大半で、当然受け取れるはずの年金が不払いとなって、受給者は泣き寝入りしていたのです。
今回、統合できない番号が5000万件にもなることが明らかになりました。また、記録そのものが消えているという事態も明らかになりました。
記録を照合し、確認できれば年金として受給できますが、5年以上の前の年金は、「時効」により受け取ることができず、時効による不利益も問題点となっていました。
このような経過から、平成19年7月に年金時効特例法が成立しました。
年金時効特例法について
この法律により、年金記録を訂正する場合は、時効により消滅した分を含めて全額支払われることになりました。
すでに記録が訂正されている人も、今後記録が訂正される人も対象となって、時効のために当然もらえるはずの年金がもらえないという不利益はなくなります。
年金を受給している該当者には、9月以降、「時効特例給付支払手続用紙」が送られてきますので、それを提出することによって、不払いとなっていた年金が受け取れます。
社会保険庁は、平成19年7月19日に、まず145人に総額7423万円を支給することを決めました。
また、年金記録問題に対応するため、年金記録確認第三者委員会が設置されました。
第三者委員会は、年金記録の確認について、社会保険庁側に記録がなく、本人も領収書等の物的な証拠を持っていないといった事例について、 本人の立場に立って申立てを十分に汲み取り、様々な関連資料を検討し、記録訂正に関し公正な判断を示すことを任務とします。
年金記録に異議がある場合は、第三者委員会へ審査を申し込むことができます。
この申し込みは社会保険事務所でも受け付けします。7月13日には、直接証拠のない15件について、年金の支給を認めるべきだという判断を始めて第三者委員会が示しました。
年金で不利益を受けないために
年金で不利益を受けないためには、まず、これまでの年金加入期間を確認することです。
宙に浮いた年金の原因は、名前の間違い、読み違い、生年月日間違い、会社名の変更などが原因となっていますので、「記憶」にある「記録」が出てこない場合は、いろいろな方法で検索をしてもらうことが大切です。
姓が変更になっている人は要注意です。旧姓でも探してもらいましょう。
いろいろな読み方のできる名前の人も気をつけてください。
自分は菅野哲正ですが、「哲正」は「てつまさ」とも「てっせい」とも読めます。別の読み方で探すと確認できる場合もあります。そして、手がかりになるものがあれば、できるだけ揃えます。
社会保険事務所で確認する場合は、職歴一覧表を用意して行くといいでしょう。
会社名がわからない場合は、思い当たることをメモしておきます。
なお、共済組合の加入期間は、各共済組合で確認することになります。
社会保険庁のコンピュータでは、共済組合の全期間について確認ができません。
社会保険庁には問題解決のためにしっかり調査し、最善をつくしてほしいと思いますが、自分の年金を守るため、ひとりひとりの努力も必要です。
保険料は正しく納めて、正しい年金を受け取りましょう。
憲法25条の生存権を守るのに、自分の努力も忘れてはいけないんだと思います。
2007年07月26日
カテゴリー:年金トピックス