社会的背景にある問題点

社会的背景にある問題点


■少子高齢化の進展■
出生率が落ち込むと保険料を納める人数の減少し、保険金を受け取る人数の増加の相対効果により年金システムの基盤が崩壊するのではないかという恐れがあります。そのためには年金制度自体も人口構造が変化しても困らない仕組みに変えていくべきとの意見もあります。

■不透明な経済情勢■

 経済成長率の鈍化、企業倒産の増加、失業率の上昇、超低金利などの経済環境の悪化も年金財政に重大な影響を与えています。運用面から見ると企業年金、厚生年金基金等においては既に積み立て不足という形で深刻な問題になっています。

■年金の危機■

 公的年金は社会・経済の変化等に対応していくための5年毎の財政再計算により、本来であれば年金の危機といわれる程の状況には陥らないはずでした。しかし、近時の環境の変化の大きさとスピードはこれまでの想像を超えるものであり、制度そのものを大きく変えていかなければ対応することが困難になってきています。 

■制度見直しによる不平感■

 見直しがより厳しい方向へ下方修正されることや、人口見通しや経済環境が悪くなっていくのではないかという先行きの不透明感が増大し、現行の年金制度のままでは乗り切れないのではないかという制度に対する不信、不安も増幅しています。

 財政状況から若い世代ほど給付条件が悪化する傾向にあり、今後給付が見込まれる今までの水準を維持することがむずかしくなってきていると同時に負担の増加も見込まれるため、負担と給付の世代間不公平感が増してきています。
 負担と受給の不均衡の拡大はこのまま放置しておけないところまできており何らかの対策が必要となるはずです。高額の所得がありながら年金を受給している人の割合も無視できない状況にあります。2千万円以上の年収があった人のうち割近くが年金受給者という事実もあります。
 
 高齢者は全員が弱者であるという前提での一律の年金給付は若い世代の負担増の抑制と年金制度への信頼回復のためにも根本的に見直す必要があります。 

■社会保障制度に対する教育の貧弱さ■

 貰い損とか掛け損などといった、そもそもの公的年金の扶助の仕組みを否定するような損得論からくる意見も強くあり本来の年金のあるべき姿を学ぶ機会がもっと必要なのではないでしょうか。

 社会保険庁によると、全国の中学、高校で、昨年度に行われた年金教育の実施率(全校に対する実施校の割合)は19%。中学校の「社会科」や高校の「公民科」の授業で、社会保障を学ぶ機会はあるものの、年金ばかりに時間は割けない。受験科目が優先されがちなことも、実施率が低い理由に挙げられそうです。

 また、年金教育は教員対象にも行われており、実施率は45%。その割合を高めることも、普及のカギの一つといえるのではないでしょうか。
 
 社会保険庁が年金教育を本格的に始めたのは1993年度からです。中学生用と高校生用の副読本を作りました。翌年度からは教員を対象に年金セミナーも開催しました。しかし、授業で取り上げられることはほとんどなく、1998年度から直接生徒に教えるよう取り組みが強化されました。
 
 2003年度は全国3170校で授業を実施しました。年金広報専門員は2003年度で全国に132人。教員OBが83人、あとは社会保険事務局OBです。具体的な活動は個々人の裁量に任せていることが現状です。

 社会保険庁は、学習指導要領の中に年金を明確に位置づけるよう、文部科学省に要望を重ねています、これに対し文科省は、指導要領にはすでに「社会保障の充実」「少子高齢社会と社会保障」などの言葉があることを指し、「全くないわけではない」(教育課程課)と反論しています。だが、授業数が削減されている中、必須の部分を削ってまで年金に時間を割く余裕はない、というのが現場教員の本音ではないでしょうか。各都道府県の社会保険事務局は2003年度から、地元の教育委員会などに呼びかけて「年金教育推進協議会」を設置し始めました。「お願い」がしやすい環境づくりに努めています。

2006年05月22日

カテゴリー:年金制度の基礎知識


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