海外に学ぶ年金制度
ここでは保険先進国のアメリカと福祉国家で名高いスウェーデンの年金制度を比較・紹介します。
各国年金制度概要
<アメリカ>
高齢化の進展や出生率の長期的な低下によって、社会保障年金の受給者に対する現役世代の割合が、現在の3.4人に1人から2050年には2人に1人になることが予想されています。
こうした中で、現行制度のままでは、ベビーブーマーが年金受給世代となる2010年代以降、年金財政が厳しいものとなることが予想されています。具体的には、2016年に支出が収入を上回り、2038年には積立金が枯渇し、現行制度で予定される給付の全てを支給することができない状況となることが見込まれています。かねてより、こうした長期の財政問題に対処するための改革が取り組まれています。
<スウェーデン>
1914年に世界で初めて「社会保険制度に基づく皆年金制度」を実現した国です。1999年改革が行なわれるまでの時代背景は以下のようになっています。
1)人口高齢化及び年金給付費の増加
将来における年金給付費は、人口の高齢化とともに増大することが予想されていた。1994年に行われた人口推計では、スウェーデンの高齢化率(65歳以上人口割合)は、1990年以降2005年頃までは一時的に微減傾向を見せるが、その後上昇に転じ、ピーク時となる2035年から2040年には22.4%に達するものと予想されていた。
(2)経済の低成長
旧制度では既裁定年金について物価スライドが行われていたが、90年代初めに経済成長率が低下する中、それを超える物価スライドが要請される結果となり、年金財政の悪化が強く懸念された。
(3)付加年金額計算方法(15年ルール・30年ルール)の不公平
旧制度では、生涯の最も所得の高かった15年間を年金額計算の基礎としていたため、生涯に獲得した所得総額が同じ場合でも人によって年金額が大幅に異なるといった事態(生涯における所得上昇率が大きかった者ほど年金額が大きくなる傾向)が生じたり、30年加入で満額年金が受給できるルールがあるために、30年を超えて働いても、保険料を徴収されるだけで、老後の年金額が増加しないといった事態が生じたりする等、社会的な不公平が問題とされていた。
このように日本と同じような悩みを抱えていましたが、1999年改革と呼ばれる大幅な年金制度改革により現在は年金制度として高い評価を得ています。
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合計特殊 |
日本 |
'05) 8.5 |
'05) 8.5 |
'05) 5.7 |
'05) 2.08 |
'04) 1.29 |
アメリカ |
'03) 14.1 |
'02) 8.5 |
'02) 7.8 |
'02) 4.0 |
'03) 2.04 |
スウェーデン |
'02) 10.7 |
'02) 10.6 |
'02) 4.3 |
'02) 2.39 |
'02) 1.65 |
【保険料比較】
日本 基礎年金保険料 13,580円 (17年度)
厚生年金保険料 給料の14.48%(労使折半)
アメリカ $87,000を上限に給料の12.4%(労使折半)
スウェーデン 給料の18.5%(労使折半)
【財源の国庫負担】
日 本 16年度より3分の1から段階的に平成21年度までに2分の1へ引き上げ
アメリカ なし
スウェーデン 保障年金部分は全額国庫負担、所得比例部分は国庫負担なし
【支給開始年齢と必要最低保険料納付期間】
日 本 支給開始年齢 65歳
保険料納付要件 25年間
アメリカ 支給開始年齢 65.5歳から支給開始(67歳に段階的に引き上げ中)
保険料納付要件 10年間
スウェーデン 支給開始年齢 65歳
保険料納付要件 居住3年
【適用対象者】
日 本 20歳以上60歳未満の者 基礎年金
70歳未満の被用者 報酬比例部分
アメリカ 被用者
営業者 (所得が少ないものについての加入は不可)
無業の者は制度の適用がない
スウェーデン スウェーデンの社会保険法の対象者
(国内に居住又は就労している者。ただし、一定の所得があることが要件。)
【財政方式】
日 本 賦課方式
アメリカ 賦課方式
スウェーデン 所得比例年金の賦課方式部分 賦課方式
所得比例年金の積立方式部分 積立方式
保証年金 全額国庫負担
【年金額】
日 本 基礎部分 794,500円/年(満額)
報酬比例部分 加入期間と報酬により増加
アメリカ 報酬により変化
平均年額 約1,288,800円
スウェーデン 保証年金+所得比例部分
平均年額 保証部分 約391,200円
所得比例部分 約852,000円
以上のような比較から全ての人に公平な完璧な年金制度は無いといってもいいでしょう。
日本における新・年金制度の構築にはみなさんの意見が今以上に尊重されるべきではないでしょうか? 新・制度が導入され「もしも」個人にまかされるような自由な年金システムに変わった場合、ある一定の知識は必要なのではないでしょうか?
そして不平・不満の少ない、納得のいく制度を作るためには現在の制度の見直しをする必要があります。何も知らなくては制度に対する意見もでてきません。意見ではなく、不平や不満を言うことは誰にでも簡単なことなのですから・・・。
それにはまず、我々が今後の政策を見る目を養う必要があると思いませんか?
2006年06月05日
カテゴリー:海外の年金状況