<本章の規定>
職場における労働者の安全衛生と業務上の災害補償については、表裏の関係にあります。労働契約法は、その第5条において「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と、使用者の安全配慮義務を規定しています。
これによって、職場で働く従業員の生命・身体の保護のために、職場を安全かつ衛生的なものにする使用者の配慮・責任が重要なものとして考えられます。
労働基準法上、安全衛生や災害補償に関する事項は相対的必要記載事項となっており、安全衛生に関しては、「遵守義務」、「安全衛生管理体制」、「安全衛生教育」、「就業制限又は禁止」などを規定します。また、災害補償に関しては、労働者災害補償保険法との関係も踏まえて、「法定補償」、「法定外補償」、「第三者行為災害」「民事損害賠償」などを規定します。
なお、建設業や土木業、又は有害物を取り扱う業種などの場合には、安全衛生法上の規制も多いこともあり、就業規則本則には委任規定を定め、別規則としてその詳細を定めることが多いです。
また、安全衛生に関する事項は、業種に応じて一定規模以上の事業場については、安全委員会及び衛生委員会の付議事項とされているので(労働安全衛生法第17条等)、規定を定めるにあたっては、その審議を経なければなりません。
【規定例】
会社としての従業員への安全配慮義務に関しては、前述のとおりです。例えば、社会的な問題となっている新型インフルエンザは感染症予防法に定める感染症です。万一、従業員が感染した場合には、他の社員への感染を防ぐためにも、労働安全衛生法第68条・労働安全衛生規則第61条の適用を受け、感染した従業員の就業を禁止し、休ませなければなりません。食品衛生に関連する業種や保育所等などでは、単に職場だけの問題ではなく他へ与える影響も大きくなります。こうした観点から就業禁止規定を定めておくことは重要です。
就業禁止規定に関連して賃金の取り扱いが問題となります。従業員側の事由による伝染性の疾病や感染症疾病により就業禁止の場合は、会社側の事由によるものではありませんので、ノーワークノーペイの原則に基づき賃金支払義務は生じず無給であっても問題はありませんが、有給か無給か明確に定めておくべきでしょう。 ただし、例えば新型インフルエンザの感染防止対策として、感染者が出た職場の従業員を感染の確定を問わず一斉に休業させるなどの場合には休業手当(平均賃金の60%以上)の支払義務が生じます。
【規定例】
労働安全衛生法では、常時使用する従業員に対しては、毎年1回定期に健康診断を実施することを義務づけています。したがって、使用者として、これを実施しないことは労働安全衛生法違反となり、労働基準監督署の調査を受けた場合には是正勧告を受け、改善報告をしなければなりません。また、悪質な場合には、労働安全衛生法違反として、書類送検や50万円以下の罰金が課せられます。
なお、粉じん作業や有機溶剤を使用する業務に従事する者、深夜業に従事する者などは6箇月に1回定期に特殊健康診断を実施しなければならず、その従事する業務に応じて規定に定めるべきでしょう。
定期健康診断は、法律上従業員にも受診義務が課せられています。ただし、従業員が、会社の行う指定した医師または歯科医師が行う健康診断を受けることを希望しない場合には、他の医師または歯科医師の健康診断を受け、その結果を証明する書面を会社に提出することができるとされ、従業員に医師選択の自由が認められています。
しかし、従業員の受診拒否を理由にそのまま放置すると、会社は安全配慮義務を怠ったことになり、万一、不幸にして過労死等が起きたりすると、その責任を問われることにもなり、損害賠償請求事件までに至ることもあります。 したがって、健康診断を受けることが従業員の義務であることを明確にするためにも、規定を定める場合に「正当な理由なくこれを拒むことはできない」ことを定めるとともに、受診拒否は業務命令違反として、従わなければ懲戒処分もありえることを定めるべきでしょう。
労働安全衛生法では、過重労働による健康障害を防止するため、原則として、長時間労働者(週40時間を超える労働(時間外労働・休日労働を含む)が1箇月当たり100時間を超える者)から申出があった場合には、医師による面接指導を受けることを使用者に義務づけています。過重労働による過労死や精神疾患等を防止するためにも、その旨を規定しておくことも必要でしょう。
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