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第7章 退職金

<本章の規定>

 退職金も、賞与と同様に、法律上、その支払が義務付けられているものではありません。しかし、退職金制度は、労働者の募集への効用、従業員の定着化や老後の生活の安定などを目的として多くの企業で採用しています。制度として導入した場合又は導入している場合は、従業員にとっては重要な労働条件の一つとなり、労働基準法においても就業規則に定めるべき相対的必要記載事項として、「適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法、退職手当の支払時期」について規定しなければなりません。

 また、退職金は「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づき、その保全措置が義務づけられています。しかし、独立行政法人勤労者退職金共済機構が実施する「中小企業退職金共済制度」、確定給付型企業年金等一定の保全措置が法的に講じられている制度を導入している場合はその必要がありません。

 なお、退職金規程は賃金規程と同様に規定は詳細になるので、就業規則本則には委任規定を設け、別規定とすることが多いものです。ここでは退職金規程の中でも特に注意すべき事項に絞ってまとめることとします。

作成のポイント●33 退職金の委任規定

【規定例】

1.適用労働者の範囲と勤続年数の算定

 退職金の支給対象となる従業員の範囲は、正社員に限定するのが一般的です。その場合には、「正社員に適用する」又は「パートタイマー・嘱託には適用しない」など、その適用範囲を明確にしておくことが必要です。 適用範囲を明確にせず、雇用形態を問わず画一的な規定であったため正社員以外の従業員から退職に伴い退職金の請求を受けるというトラブルもあります。

 また、勤続年数を加味した退職金制度の場合には、勤続年数の計算において、勤続何年以上の者が支給の対象となるのか、またパートタイマー等正社員以外の雇用形態から正社員に転換した場合に勤続年数は通算されるのか、また休職期間及び出向期間の取り扱いなどを明確にしておくべきでしょう。

2.退職金の支払時期

 退職金が一時金の場合、「退職金は労働者の退職時に支払う」と規定し、労働者の退職時にその全額を支払うこととしている場合が多くあります。労働基準法第23条第1項では、「労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い」と定めています。退職金もその支給条件が明確に定められている場合は、賃金に該当しますので、その適用を受けることになります。

 しかし、退職金については、予め定めた支払時期に支払うことでも差し支えないとされています。極めて稀ですが、退職日前後に不正等の発覚により、退職金の不支給事由や減額事由に該当することも起こりえないことではありません。 したがって、支払時期を定める場合には「退職後1箇月を経過した日に支払う」など、退職日より一定期間を経過した日を支払日として規定することも有効です。

3.退職金の不支給・減額と懲戒解雇

 就業規則に、懲戒解雇又はこれに相当する事由が存在する場合、あるいは退職後に同業他社に再就職する場合には退職金の一部又は全部の支給をしない旨の条項を設けることがあります。懲戒解雇に伴う退職金の全部又は一部の不支給は、就業規則、退職金規程等に明記して初めて労働契約の内容となりますので、定めておくことは重要です。 ただし、どのような事由に基づく懲戒解雇でも不支給の規定があればそれが有効に適用されるものではありません。

 判例上は、懲戒解雇の具体的内容に照らして個別に判断されています。退職金については、これまでの勤続期間に応じた賃金の後払い的な性格も有しており、退職金不支給規定を適用できるのは、労働者の永年の勤続の功を減殺ないし抹消するほどの背信行為があった場合に限定されるとしています。

4.その他の検討事項

関係する法令・判例など

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2024/01/31 04:01 · tokita