====== 第2章 就業規則の基本 ====== ===== 1 就業規則の役割 =====  職場において、使用者(社長や部長、課長など)と従業員との間で、労働条件や服務規律(職場で守るべきルール)などについて理解がくい違い、これが原因となってトラブルが発生することがあります。  例えば、従業員側からの疑問や不満をみると、 * パートタイマー(時間給制)で採用されたんだけれど、年次有給休暇をもらえるの? * 残業や休日出勤をしているのに割増賃金がつかない。 * ボーナスがあると聞いて入社したのに、結果的に出なかった。 * 突然、関連会社に出向せよと命令が出た。 * 上司にセクハラされたけど、会社は辞めたくない。 * 定年後も働きたいんだけど、会社から、仕事がないから無理だと言われた。 * 会社の業績不振を理由にいきなり解雇された。 などです。  これに対して、使用者側もそれなりの解釈や理由があることは当然のことでしょう。  このような疑問やトラブルを防ぐためには、賃金や労働時間などの労働条件、服務規律などについてはっきりと定め、従業員に周知させておくことが必要です。このことにより、使用者と従業員の間の無用な争いを未然に防ぎ、従業員がいきいきとした明るい職場づくりが可能になります。  「就業規則」は、職場における雇用管理全般、つまり採用から退職(解雇を含む。)までの雇用上の諸問題に関する事項を定めたものです。  もちろん、就業規則があれば、すべてのトラブルを未然に防ぐことができたり、トラブルが発生したときにたちどころに解決するというものではありません。しかしながら、少なくとも、誤解によるものや無用のトラブルを少しでも小さくしたり回避する効力は充分に持っています。 ===== 2 就業規則の構成 =====  就業規則とは、その名称を問わず、使用者が定める職場規律や労働条件に関する規則類のことをいいます。ですから、賃金規程はもとより、育児休業規程や慶弔見舞金規程、旅費規程などもこれに含みます。  また、正社員の就業規則のみならず、パートタイム労働者やアルバイト社員、嘱託社員、出向社員など職種や雇用形態が異なった従業員についても、それぞれの従業員が適用される就業規則が必要になります。  このように多様なジャンルの規程や雇用形態の異なる従業員の就業規則を1冊に綴ることが困難である場合には別個の就業規則を作成することができます。この場合でも、複数の就業規則を合わせたものが[[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=労働基準法|労働基準法]]上の就業規則となり、従業員代表等の意見聴取等(後述します)については、それらを合わせて一体となった就業規則に対して行う必要があります(昭和63.3.14基発150号)。 <就業規則の構成例> {{ :sklt:sklt_01_02_kousei.png?nolink&531 |}} ===== 3 就業規則の位置づけ =====  就業規則は、専ら[[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=労働基準法|労働基準法]]、[[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=労働安全衛生法|労働安全衛生法]]、[[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=パートタイム・有期雇用労働法|パートタイム労働法]]、[[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=男女雇用機会均等法|男女雇用機会均等法]]その他の労働関連の諸法令や、[[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=民法|民法]]その他の法令などを根拠にして作成しますが、それ以外にも、職場の慣習や伝統、社風、経営方針や経営者の考え方、労働組合や従業員の要望など様々な要素や要因を基にして作成します。  また、平成20年3月から[[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=労働契約法|労働契約法]]が施行され、労働条件の決定や変更、解除等についてのルールが示されましたのでその考慮も必要になりました。  労働基準法は、労働者の労働条件、待遇等に関する「最低の基準」を定めた法律です。ですから、就業規則を作成するときは、労働基準法で定める基準を下回ることはできません。その反面、労働基準法で定める基準を上回る条件は、原則として自由に定めることができます([[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=第二章_労働契約#第十三条_この法律違反の契約|労基法第13条]])。  また、従業員と個人ごとに賃金などの労働条件を決定する「労働契約」は、就業規則に定める基準を下回ることはできないことになっています([[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=労契法_2#第十二条_就業規則違反の労働契約|労働契約法第12条]])。  このように、就業規則は、職場の慣習や様々な法令等と個別の労働契約の間をつなぐ重要で大切な架け橋ということになります。 よって、関係する法令が改正により変更になったり、職場の従業員の働き方や働かせ方が変わったときには、これに合わせて、既存の就業規則の見直しをしたり、新たな規定を追加するなどのメンテナンスをして、「常に機能する就業規則」にしておかなければなりません。 <相関図> {{ :sklt:sklt_01_02_soukan.png?nolink&491 |}} * 「労働契約」は、使用者と労働者が、法令や就業規則等を根拠にして個別の労働者の賃金や労働時間などの労働条件について契約したものです([[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=第二章_労働契約#第十四条_契約期間等|労基法第14条]]他)。 * 「労働協約」は、労働組合と使用者(又はその団体)との間に結ばれる労働条件その他に関する協定であり、書面に作成し、両当事者が署名又は記名押印したものです(労組法第14条)。 ===== 4 就業規則の記載事項 =====  就業規則の記載事項と内容は、業種、業態、労務管理方針などによって、それぞれ個性的であるべきものですが、労働基準法では、就業規則に記載すべき事項を次のように定めています(労基法第89条)。 ==== (1) 絶対的必要記載事項 ==== (必ず就業規則に記載しなければならない事項) * ①始業及び終業時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項。 * ②賃金(臨時の賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期及び昇給に関する事項 * ③退職に関する事項(解雇の事由を含む。)  前記(1)①の休暇には、育児休業や介護休業も含みます。いわゆる育児・介護休業法による育児休業や介護休業は、休暇に含まれるものであり、育児休業や介護休業の対象となる労働者の範囲等の付与条件、育児休業や介護休業取得に必要な手続き、休業期間について、就業規則に記載しなければなりません。  また、前記(1)③には、定年制や再雇用制度、退職時の手続、解雇の事由及び手続に関する事項などが該当します。 ==== (2) 相対的必要記載事項 ==== (定めをする場合に記載しなければならない事項) * ①退職手当に関する事項(適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項) * ②臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額に関する事項 * ③食費、作業用品その他の負担に関する事項 * ④安全衛生に関する事項 * ⑤職業訓練に関する事項 * ⑥災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 * ⑦表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項(減給の制裁については、制限規定([[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=第九章_就業規則#第九十一条_制裁規定の制限|労基法第91条]])のあることに注意。) * ⑧その他事業場の労働者のすべてに適用される事項  前記(2)①の退職手当は必ず記載しなければならない事項ではありませんが、退職金制度がある場合は、労働者の範囲や支給額、支給時期などを規定しておかなければなりません。  前記(2)⑦は、制裁による戒告や降格、減給、懲戒処分などを行うことがあれば、その旨を記載しておかなければならないということです。  前記(2)⑧の事項には、旅費規程や人事考課規程、秘密保持規程などが該当します。 ==== (3) 任意的記載事項 ====  法令に定められた記載事項ではなく、記載するか否かが自由な事項です。 例えば、就業規則の目的、社是、慶弔見舞金、社会保険の適用、規則改訂の手続きなどが該当します。 ===== 5 就業規則の作成と届出 =====  労働基準法においては、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則の作成義務が課せられており、決められた事項を記載して、所轄労働基準監督署長に届け出なければならないと規定されています([[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=第九章_就業規則#第八十九条_作成及び届出の義務|労基法第89条]])。この作成義務に違反しますと30万円以下の罰金が科されます([[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=第十三章_罰則#第百二十条|労基法第120条]]第1号)。なお、この場合の「常時10人以上」は、正社員数のみならず、契約社員やパートタイマー・アルバイトなどの人数も含みます。  就業規則の作成、届出等の手順は次のとおりです。なお、変更の手順も同様です。 * ① 使用者の就業規則(変更)案作成 * ↓ * ② 過半数労働組合(又は過半数代表者)からの意見聴取 * ↓ * ③ 所轄労働基準監督署長へ届出 * ↓ * ④ 事業所における周知(配布、掲示、備付等) ==== (1) 使用者の就業規則(変更)案作成 ====  就業規則を作成し、変更する主体は使用者です(労基法第89条)。まず、使用者が原案を作ります。原案ではなく初めから確定的な就業規則として従業員側に提示しても差し支えありませんが、労務管理上からみると原案として提示したほうが従業員との摩擦も少なくソフトタッチで良いでしょう。 ==== (2) 労働者代表等からの意見聴取 ====  使用者が、就業規則(案)を作成しましたら、労働者代表等から意見を聴取しなければなりません。 この場合の労働者代表等とは、「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者([[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=第九章_就業規則#第九十条_作成の手続|労基法第90条]]第1項)。」となります。  ここでいうところの過半数で組織する労働組合とは、労働基準法の適用単位である事業場単位でみることになりますので、事業場に過半数で組織する労働組合がある場合には、その労働組合の意見を聴取すればよいということです。事業場に過半数で組織する労働組合がない場合は、従業員の中から過半数代表者を選出して、その代表者から意見聴取をしなければなりません。  この過半数代表者は、「事業場全体の労働時間等の労働条件の計画・管理に関する権限を有する者など、管理監督者ではないこと」とされていますので、一般的には、部長職や課長職などの管理者を代表者とすることはできません。また、選出方法にも注意が必要です。過半数代表者が、使用者の指名などで選出されないことや民主的な手続きで選出されること、すなわち、投票・選挙等の方法によって選出されることが必要です(平成11.1.29基発45号)。  労働者代表等からの意見聴取は、「意見を聴く」ことでよく、「同意」までは要求されません。 できるかぎりその意見を尊重する、という趣旨です(昭和25.3.15基収525号)。  労働者代表等の意見は「意見書」にして、就業規則と共に労働基準監督署長に提出します。なお、この意見書の内容が当該就業規則に全面的に反対するものであると、特定部分に関して反対するものであるとは問われず、就業規則の効力には影響がないとされています。従って、賛成であろうと反対であろうと、労働者代表の意見書が添付されていれば、労働基準監督署はこれを受理し、また反対の意見があったとしても就業規則自体の効力には影響がありません(昭和24.3.28基発373号)。  もし、労働者代表等が反対して意見書を出さなかった場合どうなるのでしょうか。 この場合でも、意見を聴いたことが客観的に証明されれば就業規則は受理されるようになっています(昭和23.5.11基発735号、昭和23.10.30基発1575号)。  さて、パートタイム労働者など一部の労働者に適用される個別の就業規則を作成した場合の意見聴取はどのようにしたらよいのでしょうか。  このような就業規則も「当該事業の就業規則の一部である」から、その作成・変更に際しては、当該事業場のパートタイム労働者を含めた全労働者の過半数労働組合又は過半数代表者の意見を聴かなければならないということになります。 なお、いわゆる[[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=パートタイム・有期雇用労働法|パートタイム労働法]]では、前述のようなパートタイム労働者用就業規則を作成した場合には、労働者代表等から意見聴取が行われることを前提に「当該事業場において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められる者の意見を聴くように努めるものとする([[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=パート法_3_1#第七条_就業規則の作成の手続|同法第7条]])。」となっています。 ==== (3) 所轄労働基準監督署長へ届出 ====  次の手続きは、所轄の労働基準監督署長への届出になります。届出には、就業規則本体の他に「就業規則届(表紙)」に労働者代表等の「意見書」を添付します。  労働基準監督署へは原本を提出し、それ以外に会社の控えも必要になりますので、併せて2部を用意して持参します。なお、変更の届出の場合には、就業規則の全文ではなく、変更した条項についてのみ、新旧の対照表などを作成して届出ることで差し支えありません。  さて、それでは届出をしていない就業規則は無効になるのでしょうか。  就業規則は、その性質上届出を効力発生要件としていません。就業規則は、労働条件と職場規律を集合的、画一的に定めたものでありますので、労働者に対し明示することによって、法的に労働者を拘束するものと解せられます。届出を怠れば労働基準法上の罰則の適用を受けますが、だからといって民事上労働者に対する効力を持たないというものではありません(コクヨ事件:大阪高裁判決昭和41.1.20他)。  しかし、そうは言っても実際の運用面を考えますと、届出がされていない就業規則をもって労働者を拘束するということは好ましくありません。また、記載内容を十分にチェックしていない場合には、労働基準法をはじめとする関連諸法令に抵触する問題も生じかねません。 このようなことからも労働基準監督署長への届出は必須ということになります。 ==== (4) 事業所における周知(配布、掲示、備付等) ====  [[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=第十二章_雑則#第百六条_法令等の周知義務|労働基準法第106条]]第1項は、「使用者は、この法律及びこの法律に基づいて発する命令の趣旨並びに就業規則を、常時各作業場の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によって、労働者に周知させなければならない。」と定めています。多くの事業場で意外に守られていない事項が、この労働者への周知義務ではないでしょうか。 作成したときはもとより、変更した場合にも労働者に周知しなければなりません。  また、周知については、就業規則以外にも、労使協定、労使委員会の決議についても必要になります。 周知の方法は、「常時各作業場の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法」と規定されていますが、具体的には、掲示や備付けの方法以外に、書面を労働者に交付したり、磁気ディスクに記録し労働者が記録の内容を常時確認できる方法(パソコンなどで確認できる方法)も認められています(労基則第52条の2)。  なお、常時10人未満の労働者を使用する使用者には、就業規則の作成・届出義務はありませんが、職場規律や労働条件を明確にしておくことは、従業員採用時においても、また採用後の異動や退職などのときに、誤解やトラブルを招かないようにするために重要なことですので、このような事業場であっても作成し、周知しておくことをおすすめします。 ===== 6 就業規則の活用方法 =====  経営者や会社の人事担当者にとって就業規則があると、次のようなときにとても便利です。(一例です。) * (1)従業員採用時の、必要な書類の確認をするとき * (2)試用期間の意味と運用方法の確認をするとき * (3)配置転換や出向の必要性が発生したときの運用の確認をするとき * (4)職場の秩序を維持したいときの従業員への説明材料として利用するとき * (5)時間外労働や休日出勤を命令するときの使用者の権利の確認をしたいとき * (6)女性や母性の保護にはどんなものがあるかを確認したいとき * (7)労働基準法や労働関係諸法令の内容を労働者に周知させる方法として活用したいとき * (8)結婚休暇等の特別休暇を定め、その取得方法など、運用ルールを統一化したいとき * (9)遅刻や早退、外出や欠勤などをするときの手続を定めたいとき * (10)従業員が傷病になったときの欠勤の取り扱いと休職の関係や復職の方法について確認したいとき * (11)退職や解雇の手続を明確にして、トラブルがないように運用したいとき * (12)退職していく従業員に業務の引継ぎをきちんとして欲しいとき * (13)60歳定年後の再雇用の基準を定めておきたいとき * (14)永年勤続等の従業員を表彰したいとき * (15)遅刻常習犯で、ときには、無断欠勤をするなど不真面目な従業員に制裁を与えるときのルールを作りたいとき * (16)従業員が健康に留意して元気に働くことを会社が強く望むとき * (17)賃金や賞与、退職金を支払うときの計算方法や支払いのルールを決めるとき * (18)育児休業や介護休業を従業員が希望したときの手続を統一化して、従業員に知らせたいとき * (19)セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントの防止対策や実際に苦情があった場合の対応についてどうしたらよいか困ったとき * (20)個人情報の保護や社内文書及び機密データの持ち出し・流出について対策をとりたいとき * (21)専門技術やノウハウを持った労働者が同業他社に転職することによって生じる機密事項の漏えいとノウハウの流出を防ぎたいと考えたとき ===== 7 就業規則の見直しや変更の理由 =====  就業規則は、会社(使用者)と従業員(労働者)との間の権利や義務を定めたものです。 このことから会社の労働契約の約款という位置付けになるでしょう。憲法という言い方をする方もいらっしゃいますが、会社の文書体系において王様の位置にはありませんので、憲法ではありません。この会社の法律たる労働契約約款は、国の法律と異なりたびたび改定や変更が必要になります。それは、次の理由によります。(一例です) - 法改正があった - 就業規則に記載されている労働条件と実際の就業の状態にギャップ(ズレ)がある - 非正社員の増加で、正社員用の就業規則がそのままの状態では使えない - 労使問題(紛争)が生じたときに、就業規則がその解決に対応できる内容となっていなかったため混乱を生じ、その反省を踏まえ、今後のトラブル防止又は予防のために改定する - 会社の成長や労働環境の変化により、従業員側から又は会社の起案により労働条件の変更の要望が生じた - 合併や吸収、会社分割、営業譲渡など経営状況に大きな変化があった - 労働組合が結成され団体交渉などが行われ、又は労使協議制により従業員の労働条件に変更があった - 企業防衛及びリスク管理のために、新たに規定を追加する必要性が出てきた - 助成金を受給するために就業規則への規定の追加や見直しが必要になった - 労働基準監督署から是正勧告や指導を受けた ===== 8 就業規則の不利益変更における留意点 =====  従業員にとって有利になる就業規則の変更は、特に問題は起こりませんが、従業員に不利となる変更はいろいろと問題が生じる場合があります。  不利益になる変更の具体的な例としては、①定年制がない規則に新たに定年制を設ける。②休職期間を短くする。③賃金の一部をカットする。④退職金の支給額や支給率を低減させる。⑤労働時間を延長する。というような変更です。  さて、手続において、就業規則の変更は会社が変更手続が出来るようになっています。 ここで問題になるのは、従業員に不利益になる変更を一方的に行うことが可能か否かということです。 平成20年に施行された労働契約法では、従来の判例法理を踏まえて、労働者及び使用者の合意なく、労働条件を変更することはできないとされており([[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=労契法_2#第八条_労働契約の内容の変更|同法第8条]])、また、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することは、原則としてできないことになっています([[https://www.kannosrfp.com/hourei/doku.php?id=労契法_2#第九条_就業規則による労働契約の内容の変更|同法第9条]])。  代表的な判例としては、「秋北バス改正就業規則効力停止請求事件:最高裁大法廷判決昭和43.12.25」、「タケダシステム事件:最高裁第二小法廷判決昭和58.11.25」、「第四銀行事件:最高裁第二小法廷判決平成9.2.28」などがあります。 これらの判例のポイントを一言でいいますと「従業員にとって不利益な変更は、合理的な変更と認められる場合に限って、効力を有する」ということになります。この点をわかりやすくするために「従業員の不利益性」と「会社にとっての合理性」の判断について図示します。 <就業規則の不利益変更の判断> {{ :sklt:sklt_01_02_furieki.png?nolink&562 |}} * ○○ゾーン:変更についての会社側の必要性が高く、かつ、従業員の不利益性の小さいことから、変更には合理性があると認められる可能性が大きい。 * ○×ゾーン:変更についての会社側の必要性は高いが、従業員の不利益も大きい。又は従業員の不利益は小さいものの、会社側の必要性も低いので、変更に合理性があるかどうかは微妙なところ。 * ××ゾーン:変更についての従業員の不利益性が大きく、かつ、会社側の必要性が低いので、変更には合理性がないと判断される可能性が大きい。 ====== 就業規則作成・見直ポイントの関連ページ ====== {{page>[就業作成_0]#[就業規則作成・見直ポイントの関連ページ]}}