📌ポイントの全体像

🔷 社会保険料(健保・厚年)

折半額の50銭未満 → 切捨て
折半額の50銭以上 → 切上げ
※特約あり:被保険者負担分を常に切捨て可

🔶 雇用保険料

被保険者負担分は1円未満を切捨て
※日雇労働被保険者(印紙保険料)も同じく1円未満切捨て
📘 この資料の目的 給与計算ソフトが自動処理する場合でも、担当者が正しい根拠を理解していることが大切です。 監査・労基署調査・従業員からの問い合わせに備え、ルールと根拠を把握しておきましょう。

🔷社会保険料(健保・厚年)の端数処理

なぜ端数が生じるのか

健康保険料・厚生年金保険料は 労使折半(各1/2負担)が原則です(健保法第161条第1項・厚年法第82条第1項)。 保険料率を標準報酬月額に乗じた総額が奇数の場合、2等分すると1円未満の小数(端数)が生じます。 この端数の取り扱いが「50銭ルール」です。

端数の状態 取扱い 結果 被保険者への影響
折半額の端数が
50銭未満
切捨て 小数点以下を切捨て 被保険者の負担がわずかに少なくなる
折半額の端数が
50銭以上
切上げ 1円単位に切上げ 被保険者の負担がわずかに多くなる
特約締結済みの場合 常に切捨て 端数にかかわらず切捨て 被保険者に有利な取扱い
判定フロー(社会保険料)
保険料総額を計算
標準報酬月額 × 保険料率
2で割る(労使折半)
÷ 2 → 折半額(小数が出る場合あり)
労使間に特約はあるか?
特約あり
被保険者負担分を
常に切捨て
特約なし → 端数は?
50銭未満
切捨て
50銭以上
切上げ
計算例(月次保険料)
例① 端数20銭 → 切捨て
種類健康保険料(東京都 9.98%)
標準報酬月額88,000円
保険料総額88,000 × 0.0998 = 8,782.4円
折半額4,391.2円
端数20銭(<50銭)
被保険者控除額4,391円(切捨て)
事業主負担8,782.4 − 4,391 = 4,391.4円
※事業主負担は被保険者分を引いた残額
例② 端数60銭 → 切上げ
種類健康保険料(東京都 9.98%)
標準報酬月額104,000円
保険料総額104,000 × 0.0998 = 10,379.2円
折半額5,189.6円
端数60銭(≥50銭)
被保険者控除額5,190円(切上げ)
事業主負担10,379.2 − 5,190 = 5,189.2円
※切上げにより被保険者が1円多く負担
⚠️ 事業主負担額の扱いに注意 被保険者負担額(整数)を確定してから、事業主負担額=総額-被保険者負担額で計算します。 事業主側に小数が残る場合がありますが、会社全体の納付総額(保険者への支払額)は整数となります。
賞与の場合も同じルール

賞与から控除する保険料も、標準賞与額 × 保険料率 ÷ 2 の結果に同じ50銭ルールを適用します。

賞与計算例(健保 9.98%、標準賞与額 500,000円) 500,000 × 0.0998 = 49,900円 → 折半 24,950円 → 端数なし → 被保険者控除 24,950円

🔷 労使特約(被保険者有利の特約)について

  • 事業主と被保険者の間で特約を締結した場合、50銭以上でも被保険者負担分を常に切捨てとすることができます。
  • この特約は給与規程や労働協約に明記します。
  • 特約がない場合は50銭ルールが原則です。
  • 多くの給与計算ソフトでは「端数処理方法」の設定で選択できます。

🔶雇用保険料の端数処理

基本ルール:1円未満は切捨て

雇用保険料は社会保険料と異なり、毎月の賃金に被保険者負担率を直接乗じた額を給与から控除します。 計算結果に1円未満の端数が生じた場合は、一律に切捨てて整数化します。

事業の種類 被保険者負担率
(令和7年度)
事業主負担率 合計率
一般事業 6/1000 9.5/1000 15.5/1000
農林水産・清酒製造業 7/1000 10.5/1000 17.5/1000
建設業 7/1000 11.5/1000 18.5/1000

※令和7年度(2025年4月〜)料率。事業主負担には雇用保険二事業分を含む

計算例(雇用保険料)
例③ 端数あり → 切捨て
事業区分一般事業
当月賃金185,600円
被保険者負担率6/1000
計算結果185,600 × 0.006 = 1,113.6円
控除額(端数切捨て)1,113円
0.6円(1円未満)を切捨て
例④ 端数なし
事業区分一般事業
当月賃金250,000円
被保険者負担率6/1000
計算結果250,000 × 0.006 = 1,500.0円
控除額1,500円
端数なし → そのまま
📘 賃金の範囲に注意 雇用保険料の計算基礎となる「賃金」には、通勤手当・残業代・住宅手当なども含まれます。 非課税通勤手当は社会保険料計算には含まれますが、所得税は非課税となるため、 給与明細の各計算基礎を正しく把握しておきましょう。

📊社会保険料と雇用保険料の端数処理 比較

項目 社会保険料(健保・厚年) 雇用保険料
端数処理の単位 50銭(0.5円) 1円
基本ルール 50銭未満→切捨て、50銭以上→切上げ 1円未満は常に切捨て
特約による変更 被保険者有利(常時切捨て)の特約あり なし(常に切捨て)
計算方法 総額計算後に2等分(折半) 賃金 × 被保険者負担率を直接計算
主な法的根拠 健保法161条・167条
厚年法82条・84条
昭和36年3月31日通達
徴収法第31条
国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律(昭和25年法律第61号)第2条
端数の発生タイミング 保険料総額が奇数の場合 賃金 × 料率の計算結果が整数でない場合

📖法的根拠一覧

区分 法令・通達 内容
健保・厚年
(負担根拠)
健康保険法 第161条第1項
厚生年金保険法 第82条第1項
lawId: 211AC0000000070 / 329AC0000000115
被保険者・事業主がそれぞれ保険料額の二分の一を負担
健保・厚年
(控除根拠)
健康保険法 第167条第1項
厚生年金保険法 第84条第1項
lawId: 211AC0000000070 / 329AC0000000115
通貨で報酬支払い時に被保険者負担保険料を控除できる
健保・厚年
(端数処理)
昭和36年3月31日
保険発第1039号・庁保険発第10号
行政通達(e-Govでは非公開)
折半額の端数処理:50銭未満→切捨て、50銭以上→切上げ。特約による常時切捨ても可。
雇用保険
(負担根拠)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第31条第1項
lawId: 344AC0000000084
被保険者は雇用保険率に応ずる保険料の二分の一を負担
雇用保険
(端数処理)
国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律
第2条
lawId: 325AC0000000061
国の債権の確定金額の1円未満の端数は切捨て
日雇雇用保険
(端数処理)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第31条第2項
lawId: 344AC0000000084
印紙保険料の折半額に1円未満の端数があるときは切捨て(法律に明示規定あり)

よくある誤りと正しい取扱い

  • 社会保険料も雇用保険料と同じく「1円未満を常に切捨て」で処理している 社会保険料(健保・厚年)は50銭ルールが適用されます。50銭以上の場合は切上げが必要です。
  • 雇用保険料を「四捨五入」で処理している 雇用保険料は「常に切捨て(1円未満切捨て)」です。四捨五入は誤りです。
  • 事業主と被保険者の負担を独立して計算し、それぞれに端数処理をしている 社会保険料は「総額を先に計算→折半→端数処理」の順序が正しい。それぞれ独立計算すると合計が合わなくなります。
  • 特約なしで被保険者負担を常に切捨てにしている 特約がない場合は50銭ルールが原則です。特約締結が必要です(給与規程・労働協約への記載を忘れずに)。
  • 通勤手当を雇用保険料の計算から除外している 通勤手当(非課税分含む)は雇用保険料の計算基礎となる賃金に含まれます。

月次給与計算 端数処理チェックリスト

  • 給与計算ソフトの端数処理設定を確認した(社保:50銭ルール or 特約切捨て)
  • 社会保険料は「総額計算 → 折半 → 端数処理」の順序で計算している
  • 雇用保険料は「賃金 × 被保険者負担率 → 1円未満切捨て」で計算している
  • 特約を採用している場合、就業規則・給与規程等に明記されている
  • 雇用保険料の計算基礎に通勤手当を含めている
  • 賞与の保険料控除も同じルールで処理している
  • 月ごとに給与計算ソフトの計算結果を保険料額表と照合している
⚠️ 誤った端数処理を長期間続けた場合のリスク 端数の過不足が積み重なると、年間を通じた保険料の不足・過納が生じます。 労基署・年金事務所の調査で指摘された場合、さかのぼって修正・追納が必要になることがあります。 定期的に給与計算ソフトの設定を確認し、正しいルールが反映されているか確認しましょう。