自己申告された残業時間の信憑性に疑問がある場合にはどうすればよいでしょうか?

 当社では、出先で業務を行っている社員がおりますが、出先には管理者がいないため、発生した残業時間については自己申告制とし、申告された時間をそのまま計上して残業代を計算しています。

 しかし、申告された時間の信憑性には以前から疑問を感じています。

 このような場合、どのようにすればよいでしょうか。

上記「自己申告された残業時間の信憑性に疑問がある場合にはどうすればよいでしょうか?」に対する回答

 時間外労働の自己申告制を採用する場合には、強い信頼関係が必要です。

 もし信頼関係が築けないようでしたら、自己申告制を廃し、労働時間を把握するための何らかの方法を講じる必要があります。

 労働基準法第108条は「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他命令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない」と、使用者に賃金台帳の作成義務を課しています。

 そして、同法施行規則(以下「規則」という)では、賃金台帳に記載すべき事項について、
1.氏名、
2.性別、
3.賃金計算期間、
4.労働日数、
5.労働時間数、
6.時間外・休日・深夜労働時間数、
7.基本給、手当その他の賃金額、
8.賃金の一部控除額、
 を挙げています(同規則第54条)。

 したがって、使用者は、賃金台帳を作成するために、1人ひとりの労働者の労働時間等について把握する必要がありますが、労働時間の把握の方法には、タイムレコーダーを利用する、上司が出勤を記録する、自己申告制とするなど、企業によって様々な方法が採られています。

 ところで、ご質問では、自己申告制を採用しているが、その申告の信憑性について疑いをもっておられるとのことです。

 こうしたことはよくあることですが、そもそも、使用者側からみれば、一般に、労働時間の自己申告制は本人の申告によって労働時間を把握しようとするものですから、そこには強い信頼関係がベースになるものです。

 しかるに、ご質問では、その信頼がゆらぐような事態が生じているものと推察されます。

 そこで、この問題を解決するためには、まず、信頼関係を回復するために、率直な意見交換(話し合い)をしてみる必要があります。

 しかし、それでも解決しないようであれば、労働時間の管理(遠隔管理)を実施するとともに、具体的に日々の労働時間を把握する必要があります。

 そのための方法には、仕事の進行状況を随時チェックするなど、労働時間の管理を強めることを前提に、出先で終業時にメールやFAXで連絡させるとか、時間外労働をするときは事前申告をさせるなどの方法を講じるようにするとよいでしょう。

 ただし、この場合にも、申請された時間外労働に対しては、割増賃金を支払う必要がありますので注意してください。

カテゴリー:労働時間

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