労働時間の開始と終了は、どこからどこまでをいうのでしょうか?

 労働時間はどの範囲のことをいうのでしょうか。

 たとえば、会社の敷地や建物に入ったときなのか、安全着や制服の着用後からなのか、職場体操終了後なのか、作業準備後なのか、実際に業務を開始したときなのかなど、具体的に教えて下さい。

上記「労働時間の開始と終了は、どこからどこまでをいうのでしょうか?」に対する回答

 労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令に服し労務を提供している時間のことをいいます(これには、実際に作業していない手待ち時間も含まれます)が、労働時間に含まれるかどうかは、
1.使用者の命令があるかどうか、
2.業務に付随したものであるかどうか、
3.法令で義務づけられたものであるかどうか、
 などを基準に判断することになります。

 一般に、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令に服し労務を提供している時間」のことをいいます。

 しかし、実際の労働時間の開始時間は、会社の敷地や建物に入ったときからなのか、実際に業務を始めたときからなのか、また、安全用作業着を着用したり、制服に着替えたときなのかなど、どの時点から労働時間となるかが問題になります。

 この問題については、
1.使用者の命令があるかどうか、
2.当該作業を行なうために必然的なもの、あるいは通常必要とされるものであるかどうか、
3.法令で義務づけられているかどうか、
 などの点から判断されますが、具体的には次のようになります。

 まず、会社の敷地や建物に入った時点では未だ使用者の指揮命令下にはありませんので、労働時間とはなりませんが、作業準備時間(たとえば原材料や製品の整理整頓、機械の点検調整等)、作業終了後の整理整頓・後始末(翌日の準備を含む)は、特に使用者の明示の命令がなくても本来の業務に付随して発生するものですから、労働時間に算入しなければなりません。

 また、更衣時間については、労働者が任意に行う更衣時間は労働時間に含める必要はありませんが、あらかじめ義務づけられている制服の着脱時間や安全具の装着時間については労働時間となります。

 この点について、裁判例では「一定の強制が行われる場合には労働時間に含まれる」(昭62.11.27 長崎地裁判決「三菱重工長崎造船所事件」昭59.1.31 東京高裁判決「石川島播磨東ニ工場事件」参照)と判示しています。

 また、職場体操については、それ自体が業務に密接に関連している場合、例えば、ミーティングのあと職場体操が行われるような場合は労働時間に含めなければなりません。

 なお、入門後職場までの歩行時間や着替え履き替えのための時間については、労働時間に含めるか否かは就業規則の定めに従い、定めがない場合には職場慣行による(昭 59.10.18最高裁第一小法廷判決「日野自動車工業事件」参照)とした裁判例があります。

 以上のことから、労働時間については、職種、勤務の特性、各々の職場慣行に応じて実質的にとらえる必要がありますので、労働時間の始期と終期について、上記の基準に則って、就業規則等で明確に定めておくことが望ましいでしょう。

カテゴリー:労働時間

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