出張時の移動時間は労働時間に入れなければならないのでしょうか?

 当社では、出張時にも時間外勤務手当を支給しており、出張規程では「移動に要する時間は勤務とみなす」と規定しています。

 この場合、遠隔地に出張するときは、出張業務終了後、自宅までの移動に要する時間についても、時間外勤務として時間外勤務手当を支給すべきでしょうか。

上記「出張時の移動時間は労働時間に入れなければならないのでしょうか?」に対する回答

 出張時の移動時間は、必ずしも労働時間に算入する必要はありませんが、労働時間に算入する場合には、基準を設けておくとよいでしょう。

 一般に、出張時の労働時間については、「労働時間を算定し難い」ものとして、所定労働時間労働したものとみなすとする企業が多く見受けられますが、御社のように出張時についても時間管理を行い、時間外勤務手当の対象とする企業もあります。

 さて、出張等で自宅から直接現地に赴く場合の移動時間が労働時間か否かについては、

1.労働時間説、
2.通勤時間説、
3.出張時間(みなし時間)説、
4.休憩時間説、
5.拘束時間説

 など様々な見解がありますが、その途中に特別の用務を帯びた(指示を受けた)ものでない限り、実際の労務の提供は、目的地に到着してからなされるという点から考えますと、目的地までの時間は、通勤時間と「同一性質」であるとする?の通勤時間説が妥当なものと考えられます。

 この点については、「出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがってまた時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である」とした裁判例(昭49.1.26横浜地裁川崎支部判決「日本工業検査事件」)でも支持されています。

 このように、出張終了後の自宅までの移動時間を「通勤時間」に準じた時間と解すれば、法律上は、労働時間に入れる必要はありませんが、御社では、出張規程に「移動に要する時間は勤務とみなす」と規定されているということですので、それに基づいて処理しなければなりません。

 そこで、勤務とみなす移動時間の範囲が問題になりますが、実際には、出張終了後自宅までの移動時間は、通常の通勤時間とは所用時間および経路が異なりますので、出張先から自宅までに要する移動時間のうち、「通常の通勤時間に要する時間を超える時間については勤務とみなす」等の基準を設けて運用するとよいでしょう。

カテゴリー:労働時間

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