管理監督者の時間外労働に対して、通常の賃金(1.0の部分)の支払いは必要でしょうか?

 いわゆる管理監督者は、労働時間に関する規定は適用除外となり、時間外労働割増賃金の対象とならないと認識しております。

 しかし、割増分は不要でも、時間単価分の支払いは必要ではないのでしょうか。この点についてお教え下さい。

上記「管理監督者の時間外労働に対して、通常の賃金(1.0の部分)の支払いは必要でしょうか?」に対する回答

 管理監督者については、労働時間の規定の適用が除外されていますので、時間外の労働に対する通常の賃金(1.0の部分)と割増賃金(0.25の部分)の両方が、所定の賃金に含まれているものと解されます。

 したがって、管理監督者が時間外に労働した場合にも、通常の賃金(時間単価分)を別に支払う必要はありません。

 ただし、この場合、労働基準法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」の要件を満たす場合に限られますので、注意が必要です。

 労働基準法第41条第2号(以下「法」という)は、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者(以下「管理監督者」という)」については、「法第4章、第6章、第6章の2で定める労働時間・休憩・休日に関する規定の適用を除外」(昭63.3.14基発第150号、平11.3.31基発第168号)しています。

 したがって、管理監督者については、三六協定の締結の有無にかかわらず、1日8時間、1週40時間を超えて労働させることができます。

 これは、「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある」(昭22.9.13基発第17号、昭63.3.14基発第150号)との趣旨からとられた措置です。

 ところで、ご質問についてですが、まず、上記のことから見て、管理監督者に時間外労働という概念があるかどうかが問題となります。

 この点について、結論から申し上げますと、管理監督者は「時間外労働等の規制になじまないような立場にある」としても、一般の労働者と同様に所定労働時間は適用されますので、所定労働時間を超えて労働するという意味での「時間外労働」という概念は存在します。

 つまり、管理監督者は、三六協定によらずに1日8時間、1週40時間を超えて労働させることができるということで、所定の労働時間を超えて労働する時間外労働という概念そのものは存在するわけです。

 では、このことを前提に、管理監督者の時間外の労働に対する通常の賃金(1.0の部分)の支払いが必要かどうか検討してみましょう。

 この点についても、結論から申し上げますと、管理監督者の時間外の労働に対する賃金は、割増賃金を含めて所定の賃金に含まれているものと解されますので、ご質問の「時間単価分」(通常の賃金、すなわち1.0の部分)を、所定の賃金と別に支払う必要はありません。

 ただし、管理監督者について時間外労働に対する賃金(割増賃金を含む)を別に支払わないこととするためには、上記の行政解釈に示された管理監督者の要件を満たすとともに、「定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等」(前掲通達)によって判断することになりますので、留意が必要です。

カテゴリー:諸手当

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