残業代を、賞与時にまとめて支払っても問題はありませんか?

 当社では、これまで時間外勤務手当(いわゆる「残業代」)を、賞与支給時にまとめて支払ってきたのですが、問題ないのでしょうか?

 なお、残業代を前もって支払う場合(例えば、毎月20時間の残業とみなし、3ヵ月分の60時間分の残業手当を前もって支払い、3ヵ月のうち60時間を超えたときから、さらに残業代を加算していくという方法ととる場合など)についてもあわせて伺います。

上記「残業代を、賞与時にまとめて支払っても問題はありませんか?」に対する回答

 労働基準法(以下「法」という)第24条第1項は、「賃金の全額払いの原則」について定めていますので、いわゆる残業代についても毎月の給与支給時に支払わなければならず、賞与時にまとめて支払うことは違法となります。

 法第24条第1項は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めていますが、時間外や休日の労働に対して支払う残業代もここでいう「賃金」に該当します。

 したがって、その全額を月々の給与で支払わなければなりません(これを「全額払いの原則」という)。

 つまり、残業代は変動的賃金ですが、賃金締切日ごとに計算し、あらかじめ定めた支払い日に、その全額を支払わなければならないわけです。

 したがって、ご質問のように、残業代を賞与でまとめて支払うことは違法となります。

 また、ご質問後段の「前払い」も法第24条第1項違反となります。

 なぜなら、残業代を3ヵ月分前払いしたからといって、その月に残業代が支払われたことにはならず、全額払いの原則に抵触するからです。

 なお、この場合の「前払いされた残業代」は法律上は「臨時に支払われた賃金」として扱われます。

 ところで、いわゆる賞与は、臨時に支払われる賃金で、その法的性格は、「定期又は臨時に労働者の勤務成績に応じて支給されその額が予め定められていないもの」(昭22.9.13発基17号)とされており、残業代と賞与とは自ずとその性格を異にするものですので、通常の賃金とは区別するようにして下さい。

 貴社では、以前からご質問のような方法をとられていたということで、たまたまこれまで大きな問題にならなかったのかもしれませんが、重大な法違反を犯していることになります。

 ちなみに、上記の法第24条に違反した使用者について、労働基準法第120条は、「 30万円以下の罰金に処する」と罰則が課せられることになっていますので、速やかに正しい方法に是正するようにして下さい。

カテゴリー:諸手当

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