経費削減のために、出張日当を大幅に減額する場合には、当事者の同意が必要でしょうか?

 当社では、これまで出張者には出張の日数に応じて宿泊日当と日帰り日当を支給してきましたが、この度経費削減の一環として、対象を宿泊出張に限ることとし、日当額も食事代の補助程度に減額することを検討しています。

 この場合、当事者の同意が必要となるでしょうか?

上記「経費削減のために、出張日当を大幅に減額する場合には、当事者の同意が必要でしょうか?」に対する回答

 一般的には、労働条件の不利益変更の問題が考えられますが、労働基準法上、日当は賃金に該当しませんので、労働者の個々の同意を得なくても、減額することができるものと考えられます。

 一般に、労働条件を不利益に変更する場合には、合理的な理由が必要と解されており、賃金に関する事項のように労働契約の基本的労働条件を不利益に変更する場合は、特に厳しく扱われています。

 この点については、裁判例でも、「いったん合意されて労働契約の内容となった以上、就業規則によって労働者の不利益に変更することはできない」(昭46.9.13東京地裁判決「日本貨物検数協会事件」)とし、もし、やむを得ず労働条件を不利益に変更する際には個々の労働者の同意を要するものとしています。

 そこで、出張時に支払われる日当は、基本的な労働条件である賃金にあたるかどうかが、問題となりますが、労働基準法は、賃金について「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」(同法第11条)をいうこととしてむり、任意的・恩恵的な給付や福利厚生施設に関するものは賃金には該当しないものとされています。

 日当は、従業員が実際に要した費用の一部を補填するものですので、福利厚生施設もしくは実費代償に当たると考えられます。

 したがって、一般にも、出張時に支払われる日当は賃金ではないものと考えられ、所得税法も基本的には所得に含まない(ただし、実費補償の範囲を超える場合はこの限りではない)ものと扱われています。

 以上の理由から、個々の労働者の同意を得ずに、日当の支給対象の範囲や額を不利益に変更してもただちに問題となることはないものと思われます。

 ただし、変更による不利益の程度があまりに大きい場合には、一定の経過措置を設けるなど不利益緩和措置を設けるなどの配慮が必要でしょう。

カテゴリー:諸手当

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