退職金の支払期日を遅らせることができるでしょうか?

 当社では、借り上げ社宅を利用している社員が退職する際に、居室の原状回復等にかかる費用を、その社員の退職金から控除することにしています。

 当社の退職金規程では、退職日から30日以内に退職金を支払うことになっていますが、社宅解約精算手続きが遅れたときは、退職金を30日以内に支払うことができない場合もあります。

 そのようなときは、退職者の承諾を得て退職金の支払いを遅らせていますが、このような措置に問題はあるのでしょうか?

上記「退職金の支払期日を遅らせることができるでしょうか?」に対する回答

 退職金も労働基準法上の賃金に当たりますので、全額払いの原則が適用されます。

 したがって、社宅の原状回復費用を退職金から控除するには、労使協定の締結が必要です。

 労使協定や就業規則等で支給条件が明確に定められた退職金は、労働基準法第11条に定める賃金に該当しますので、同法第24条第1項の「賃金の全額払いの原則」が適用されます。

 したがって、退職金から社宅の原状回復費用等を控除するには、過半数労働組合または過半数代表者と書面による協定(以下「労使協定」という)を締結していなければなりません。

 ご質問では労使協定が締結されているかどうかは不明ですが、社宅の原状回復等の費用控除に関する労使協定を締結していなければ、仮に本人の承諾を得たとしても、退職金から社宅の原状回復費用等を控除することはできないことに注意して下さい。

 次に、ご質問後段の、従業員の承諾が得られれば、退職金規程に定める退職金の支払い期日を遅らせることができるかどうかという点については、個々の退職者の承諾が得られれば、退職金の支払期日を遅らせることができないわけではありませんが、承諾が得られない場合には、本来の支払い期日までに退職金を支払い、後日あらためて原状回復費用等を請求することになります。

 なお、借上げ社宅の精算手続き等の関係で退職金の支払が遅れることがしばしばあるようであれば、遅延の含みをもたせて退職金の支払期日を繰下げる(たとえば「退職日より○ヵ月以内に支払う」などのように)ことを検討されてはいかがでしょうか。

カテゴリー:退職金

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