社員が在職中又は退職後に機密事項を漏洩したときは、どのように対処すればよいのでしょうか

 社員が在職中又は、退職後に会社の重要な秘密事項を漏洩したときは、どのように対処すればよいのでしょうか。

 判例等があれば、併せて教えて下さい。

上記「社員が在職中又は退職後に機密事項を漏洩したときは、どのように対処すればよいのでしょうか」に対する回答

 就業規則に機密保持義務及び機密漏洩に対する懲戒の定めがある場合には、在職中の社員については、その定めに基づいて懲戒処分に付すことができます。

 また、退職後の社員については、営業上の秘密に接した者に限っては守秘義務契約を締結しておけば、もしこれに違反して機密を漏洩し会社が損害を受けたときは、損害賠償等の法的措置をとることができます。

 まず、在職中の社員に対しては、就業規則に機密事項に関する守秘義務の定めと守秘義務に違反したときは懲戒処分にする旨の規定がある場合には、実際に機密を漏洩した社員を懲戒処分することができます。

 しかし、退職後の守秘義務については微妙な問題を含んでいます。

 なぜなら、在職中に身につけた技術やノウハウのすべてに守秘義務を強制しますと、労働者は職業生活で身に付けた知識、経験、技能、人脈等を生かして転職をすることが不可能となり、職業選択の自由、営業の自由を不当に侵されることになるからです。

 しかし、一方では、企業にはさまざまなノウハウや顧客情報、開発中の製品情報等の営業秘密が存在していますので、企業独自のノウハウや技術等については一定の範囲で退職後も守秘義務を課すことがみとめられるものと考えられます。

 ところで、不正競争防止法2条3項は、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」を「営業秘密」と定義しています。

 したがって、この規定から見ると、営業秘密としてそれに接することができるような者に限って守秘義務を課することができ、労働者が退職後にこれに違反した場合には、差し止め請求・損害賠償請求が可能であると解されます。

 また、この問題に関した裁判例の中には、「原則的には、労働契約終了後は守秘義務を負担するものではないというべきであるが、少なくとも、労働契約継続中に獲得した取引先の相手方に関する知識を利用して、競業を行なうことは許されないもの解するのが相当であり、そのような働きかけをした場合には、労働契約上の債務不履行となるものとみるべきである」(平5.1.28東京地裁判決「チェスコム秘書センター事件」)と、退職後の守秘義務違反について労働契約不履行として損害賠償請求をすることも可能と判示したものがあります。

 なお、会社側の防止策としては、退職後も守秘義務があることを就業規則に定めておくこと、また特に必要のある者については退職後の守秘義務契約や競業避止契約を退職時に結んでおくことなどの方法が考えられます。

 そして、これらの誓約に違反したときは、損害賠償請求をすることがある旨を付記しておくとよいでしょう。

 ただし、実際に損害が生じたときは、機密漏洩と損害との間の因果関係を会社が証明しなければなりません。

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