在宅勤務の者が自宅で作業中に怪我をしたときは、業務上の災害として労災認定を受けられますか?

 当社には、出産等のため毎日出勤できない女性社員のうち、希望者に限って在宅の勤務を認める在宅勤務制度を実施していますが、そのうち、ある女性が自宅で業務を遂行中に怪我をしてしまいました。

 このような在宅勤務の者が、自宅で作業中に怪我をした場合には、業務上の災害として、労災認定を受けることができるでしょうか。

上記「在宅勤務の者が自宅で作業中に怪我をしたときは、業務上の災害として労災認定を受けられますか?」に対する回答

 まず、その者が労働者として認められるかどうか、次に、その怪我が業務に基づいて起きたのか、つまり、業務遂行性、業務起因性があるかどうかによって労災認定の可否が判断されます。

 労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という)は、労働者の業務上の事由による災害に対する労働基準法上の使用者の補償義務を担保する目的で制定されたものです。

 したがって、労災保険法が適用される「労働者」は、労働基準法第9条で定める「労働者」と同一のものと解されています。

 ところで、労働基準法第9条では労働者の定義について「労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」としています。

 つまり、使用者に使用される者であり、かつ、その報酬が労務の提供への対価として賃金の性格を有する場合には、労働基準法上の労働者に該当し、したがって、労災保険法の保護の対象となる労働者となります。

 ただし、これは形式上の契約形態でなく、実態で判断しなければなりません。

 さて、ご質問だけでは被災者の在宅勤務の状況が分かりかねるのですが、使用者の命令によって、特定の業務を果たしており、就業の場所が自宅であるというだけで、通常の社員に適用される就業規則がその在宅勤務者についても適用されている場合には、上記の労働者に該当すると考えられます。

 また、ある負傷が労災保険の業務上災害と認められるためには、原則として業務中に(業務遂行性)、その業務が原因となって(業務起因性)、罹災したものでなければなりませんが、在宅勤務をしている場合には、使用者からの管理を常に受けているわけではなく、在宅勤務者自身が自己の判断で様々な行動をとることが可能になりますから、そのひとつひとつの行為には私的な行為も出てくると考えられます。

 このように、在宅勤務者の私的行為にまで業務遂行性が認められるわけではありませんので、在宅勤務者が自宅で作業中に怪我をしたというだけでは、労災保険の適否の判断はできませんが、作業中である(業務遂行性がある)ことが確認され、また、その作業が使用者の命令下で行われたことが明白であれば、労災保険の適用は可能と思われます。

 つまり、その負傷が作業に伴う必要行為または合理的行為中に発生したもの、作業に伴う準備行為または後始末行為中に起きたものであれば、労災と認められ、給付が行われるということになります。

カテゴリー:社会保険

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