会社で机を移動中ぎっくり腰になった社員がいますが、労災と認定されるのは難しいのでしょうか?

 事務所のレイアウト変更で机を移動中、62歳の嘱託社員がギックリ腰になりました。

 腰部に関する労災認定はかなり難しいとききましたが、実際はどうなのでしょうか。

上記「会社で机を移動中ぎっくり腰になった社員がいますが、労災と認定されるのは難しいのでしょうか?」に対する回答

 腰痛の場合、腰痛の発症が加齢や運動不足からくるのか、業務上の原因からくるのかを特定するのが困難といわれていますが、「業務上腰痛の認定基準」に合致すれば労災と認定される可能性があります。

 腰痛の発症要因には、加齢によるもの、運動不足によるものなどの原因と、腰部に過度の負担を加える労働態様、労働環境などがあり、他の職業性疾患と異なって、業務上であるかどうかの判断が困難であるといわれています。

 腰痛は、種々の原因が競合して起こる場合が多いからです。

 腰痛が業務上の疾病と認められるには、業務と腰痛発症との間に相当因果関係があることが必要条件となされ、そのための判断基準として、「業務上腰痛の認定基準等について」(昭51.10.16基発第750号)が示されています。

 この認定基準では、?災害性の原因による腰痛と?災害性の原因によらない腰痛に分けられています。

 まず、災害性の原因による腰痛の基準は、通常一般にいう負傷のほか、突発的なできごとで急激な力の作用により、外傷はないが腰部の筋等の損傷を引き起こすに足りる程度のものが職務遂行中に生じた場合で、次の二つの要件のいずれをも満たし、かつ、医学上療養を必要とするときは、労災として取扱うとしています。

(1)腰部の負傷または腰部の負傷の生ぜしめたと考えられる通常の動作と異なる動作による腰部に対する急激な力の作用が業務遂行中に突発的な出来事として生じたと明らかに認められるものであること。

(2)局部に作用した力が腰痛を発症させ、又は腰痛の既往症若しくは基礎疾患を著しく増悪させたと医学的に認めるに足りるものであること。

 具体的な例としては、重量物の運搬作業中に転倒したり、重量物を2人がかりで運搬していて他の1人が滑って肩から荷をはずして瞬時に重量が腰部にかかった場合、重量物が予想に反して著しく重かったり、軽かった場合や重量物の取扱いに不適当な姿勢をとったときに背骨を支持するための力が腰部に異常に作用した場合、等があります。

 次に、災害性の原因によらない腰痛は、次の二つに類別されています。

(1)腰部に過度の負担のかかる業務に比較的短期間(おおむね3ヵ月から数年以内)従事する労働者に発症した腰痛
 (具体的な例としては、おおむね20Kg程度の重量物又は軽量不同の物を繰り返し中腰で取扱う業務、腰部にとって不自然ないしは非生理的な姿勢で毎日数時間程度行う業務等があります)

(2)重量物を取扱う業務または腰部に過度の負担のかかる作業態様の業務に相当長期間(おおむね10年以上)にわたって継続して従事する労働者に発症した慢性的な腰痛
 (ここでいう「重量物を取扱う業務」とは、おおむね30Kg以上の重量物を労働時間の3分の1程度以上取扱う業務及びおおむね20Kg以上の重量物を労働時間の半分程度以上取扱う業務をいいます)

 腰痛の認定に当たっては、上記の認定基準では、「腰痛を起こす負傷又は疾病は多種多様であるので、腰痛の業務上外の認定にあたっては傷病名にとらわれることなく、症状の内容及び経過、負傷又は作用した力の程度、作業状態(取扱い重量物の形状、重量、作業姿勢、持続時間、回数等)、当該労働者の身体的条件(性別、年齢、体格等)、素因又は基礎疾患、作業従事歴、従事期間等認定上の客観的な条件のは握に努めるとともに必要な場合は専門医の意見を聴く等の方法により認定の適性を図ること」とされています。

 さて、ご質問だけでは上記の認定基準に該当するかどうかを断定的に申し上げることはできませんが、既往の腰痛がなく、突発的にギックリ腰が発症したのであれば、労災として認定される可能性がありますので、まず、労災指定病院で療養補償の給付を受けてみて下さい。

 なお、療養補償給付の請求書が所轄の労働基準監督署に届いたあと、その請求書だけでは判断できないときは追加の書類の提出を求められる場合があります。

カテゴリー:社会保険

アクセスランキングトップ10

 次には、アクセスの多いQ&A記事のトップ10を表示しています。

  • (現在集計中)