傷病補償年金を受給している場合は、打切補償を行なわなくとも解雇制限が解除されるのですか?

 当社の社員Eは、業務災害による大事故により3年間にわたり長期療養をしています。

 現在、Eは労災保険から傷病補償年金を受給しています。

 ちなみに傷病補償年金を受給している場合は、労基法による打切補償を行わなくても解雇できるということを聞きましたが、Eの場合は、この解雇制限が解除されていると考えてよいのでしょうか。

上記「傷病補償年金を受給している場合は、打切補償を行なわなくとも解雇制限が解除されるのですか?」に対する回答

 傷病補償年金を受給している場合は、打切補償を支払ったものとみなされ、解雇制限は解除されます。

 労働基準法では、業務上の傷病のために休業する期間中とその後の30日間については、労働者を解雇することを制限しています。

 しかし、同法では、「使用者が、第81条の規定によって打切補償を支払う場合」は、前述の解雇制限を解除するとして、業務上の災害により療養のため休業する労働者を解雇することができるものとしています。

 この場合の打切補償による解雇制限の解除とは、業務上の傷病に対する療養の補償を受ける労働者が、「療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合」には、事業主は、「平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後の法律による補償を行わなくともよい」という意味です。

 したがって、3年を経過してもなお療養を継続している労働者に対して、打切補償を行えば解雇することが可能となります。

 一方、労災保険法では、「業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者」が、「療養開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けているか、又は3年を経過した日以後に傷病補償年金を受けることになった場合」には「労働基準法第81条による打切補償を支払ったものとみなす」こととし、労働基準法の解雇制限を適用しない旨定めています。

 したがって、業務上の傷病で療養中の労働者が、

(1)療養開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けているか、
 または、
(2)3年を経過した日以後に傷病補償年金を受けることになったか、

 のいずれかの場合には、使用者が打切補償を行っていなくとも、解雇制限は解除されます。

 ご質問の場合は、Eさんがすでに傷病補償年金を受給中とのことですので、療養の開始の日から起算して3年を経過したのちには、労働基準法上の打切補償を支払ったものとみなされ、解雇制限は解除されていると考えてよいでしょう。

カテゴリー:解雇・退職

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