定年直前に業務上の災害に遭った場合にも、解雇制限は適用されますか?

 定年直前に業務上の災害に遭って入院した者がいます。
 全治6ヵ月ということで定年までに治癒するのは無理なようです。

 このような場合には、定年を延長しなければならないのでしょうか。

上記「定年直前に業務上の災害に遭った場合にも、解雇制限は適用されますか?」に対する回答

 就業規則等に定年制が明示され、それが慣行となっていれば、定年延長の必要はありません。

 労働基準法では、労働者が業務上の災害による傷病の期間中とその後30日間は、解雇することを禁止しています。

 しかし、ここで制限しているのは、労働契約を使用者側の一方的意思で解除する解雇をさしています。

 そこで、業務上の災害で休業期間中に定年が到来する場合に、定年の日に退職させることが、解雇に当たるかどうかが問題となります。

 労働協約や就業規則で一定の年齢に達したら退職するというような定めがある場合には、労使双方の合意による労働契約の期間満了として、労働契約が自動的に終了するものと考えられます。

 したがって、このような定年制の定めがあり、かつ、そのような規定によって定年で退職することが慣行となっている場合は解雇とはみなされず、解雇制限は適用されません。

 つまり、業務上の傷病による休業中であっても、就業規則等に定める定年到達の日を退職の日とすればよく、退職日を延長する必要はありません。

 しかし、就業規則等に「従業員が満60歳に達したときは定年により退職する。ただし、会社が認めた場合には本人が希望し、かつ、その後継続して雇用することがある」等の定めがあり、実際に会社の都合や労働者の希望がある場合に勤務延長したり、嘱託等として再雇用する慣行がある場合には事情が異なります。

 このような場合には、定年の延長あるいは再雇用等の可能性に労働者も期待を持つことになるからです。

 このような規定がある場合には、労働基準法上の解雇制限の問題が生じ、業務上の傷病による休業期間中及びその後の30日間は解雇することができません。

 したがって、当該傷病による休業期間が終了し、その後30日を経過するまでの期間、退職日(定年)を延長することが必要となります。

 ただし、通勤災害についてはこの制限は適用されず、入院中であっても解雇できます。

 したがって、勤務延長や再雇用の慣行がある場合にも、30日前に予告すれば定年到達日をもって退職(解雇)とすることができます。

カテゴリー:解雇・退職

アクセスランキングトップ10

 次には、アクセスの多いQ&A記事のトップ10を表示しています。

  • (現在集計中)