社員が無断欠勤のまま行方不明となった場合、どうのように取り扱えばよいのでしょうか?

 社員が突然無断欠勤したまま行方不明となってしまいました。
 このまま放っておくと給料も払えませんし、社会保険料もかかります。

 解雇か退職の措置をとりたいのですが、どうすればよいでしょうか。

上記「社員が無断欠勤のまま行方不明となった場合、どうのように取り扱えばよいのでしょうか?」に対する回答

 「公示送達」によって解雇するか、就業規則の規定に基づいてみなし退職とします。

 従業員が行方不明となって、生死がわからなくなり7年経過したときは、家庭裁判所に請求することにより「失踪宣告」を受ければ、死亡による退職として取扱うことができます。

 しかし、7年もの間、在籍のままにすることは現実的ではありません。

 そこで、就業規則の懲戒解雇事由の中に、「無断欠勤が14日以上に及んだとき」などの定めがある場合には、その規定によって(懲戒)解雇することが考えられます。

 しかし、解雇するためには、解雇通知が相手に到達する必要がありますが、行方不明者には解雇の意思表示を伝えることはできません。

 ところで、民事訴訟法では、本人の所在がわからない場合、相手方への意思表示は「公示送達」によらなければならないとしています。

 したがって、行方不明者を解雇として取扱う場合には、公示送達によらなければなりません。

 公示送達は、相手方の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立て、裁判所の掲示板に掲示するほか、官報および新聞に少なくとも1回掲載するなどによって行います。

 この場合、最後に官報もしくは新聞に掲載された日から2週間を経過したときに、相手方にその意思表示が到達したものとみなされます。

 また、解雇とする場合には、30日以上前に解雇予告を行うか、平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払う必要がありますが、本人が行方不明となっていますので、この場合にも「公示送達」によることになります。

 解雇予告による場合には、官報等に掲載され、2週間を経過した日以降の日で、30日を経過した日が解雇日となります。

 また、解雇予告手当を支払えば解雇予告期間を短縮することができますが、この場合にも行方不明者には支払うことができませんので解雇予告手当相当額を供託所に「供託」したうえで、供託した旨とあわせて解雇通知のための「公示送達」を行う必要があります。

 なお、一般に意思表示は「黙示」による場合も有効と解されていますので、行方不明が本人の「黙示」の退職の意思表示とみることができる場合には、「依願退職」として取扱うことが可能です。

 そこで、就業規則に「本人が行方不明となって30日を経過した場合は退職とする」旨の定めがあれば、本人の明示の意思表示がなくても自動的に退職(みなし退職)として取扱うことができますので、就業規則の見直しをお奨めします。

  なお、この場合も本人に支払うべき給与等は、本人が受け取りに現れるまで会社で保管しておくか、「供託」の方法で預託しておかなければなりません。

カテゴリー:解雇・退職

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