課長への昇進拒否者を懲戒処分することはできますか?

 営業成績が優秀な社員に、組織管理や部下の育成にも当たってもらいたいと考え課長に昇進させようとしたら、「管理職は責任ばかり重くて報われない」と拒否してきました。

 こういう場合、懲戒処分を課すことはできるでしょうか。

上記「課長への昇進拒否者を懲戒処分することはできますか?」に対する回答

 昇進拒否に正当な理由がなければ、懲戒処分も可能です。

 人事異動には、配置転換や出向など横の異動と昇進・降職などの縦の異動があります。

 ご質問のケースは、このうち縦の人事異動に当たり、配置転換等の横の人事異動と同様、業務命令(人事発令)の形をとって行われますが、その業務命令が合理性をもつ限り、正当な理由なくこれを拒否することはできません。

 したがって、正当な理由のない昇進命令拒否は懲戒処分の対象とすることができます。

 ここで、今回の昇進命令が合理性を持つかどうかという点について見てみますと、「営業成績も優秀で、組織管理や部下育成にもあたってもらいたい」という内容からして、その社員の能力等を評価したものであり、一般的にいって合理性を有したものであると考えられます。

 ただし、当該者が、活発な組合活動を行っているような場合に、組合活動の弱体化を目的として、組合員資格を剥奪するために管理職へ昇進させるものであれば、不当労働行為に当たり無効となります。

 したがって、今回の“昇進”が、もしもこのようなケースに該当するのであれば、その人事命令は不当労働行為として、その昇進命令自体が無効となり、昇進拒否に対して処分を行うことはできません。

 また、懲戒処分は、就業規則等に定めた懲戒規定に基づいて行うことになりますが、一般に懲戒規定には「正当な理由なく、業務命令に従わないとき」等の懲戒事由が定められています。

 「責任ばかり重くて報われない」というのは「正当な理由」とはいえませんし、会社の人事権の権威や周囲の社員に対する悪影響等を勘案しますと、懲戒処分を行うことも時にはやむをえないものと考えられます。

 しかし、就業規則(懲戒規程)を盾にいきなり懲戒に処するというのは適切とはいえません。結論を出すうえでは、
(1)昇進拒否の真意、
(2)能力を専門職として活かせる可能性、
(3)課長に昇進させる真の必要性、
(4)処分の真意
 の4点について、よく吟味してみる必要がありそうです。

カテゴリー:懲戒・トラブル

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